Toll like receptor (TLR) 7およびTLR8 はウイルス由来一本鎖RNA(ssRNA)を認識し、強力な抗ウイルス応答を誘導する。これまでに我々は、TLR7/8がssRNA自体ではなく、ssRNAの分解産物であるヌクレオシドとオリゴヌクレオチドの両者を同時に認識して免疫応答を誘導するという知見を見出してきた。実際、ssRNAとグアノシン、またはウリジンを加えて免疫細胞を刺激することでTLR7とTLR8はそれぞれ相乗的に活性化する。しかし、TLR7/8が分布するエンドリソソームにおいてssRNAの分解産物であるグアノシンやウリジンがTLR7/8に結合することを示すのは難しい。そこで本研究では、RNA分解に関わるRNaseや核酸トランスポーターがTLR7/8によるssRNA応答に関与することを示し、TLR7/8応答にはssRNAの分解が必須であることを実証する。 平成28年度と平成29年度は、TLR7のssRNA応答に関与する核酸代謝関連分子の検証をin vitroおよびin vivoにおいて行った。その結果、SLC29A3やRNaseT2がTLR7応答の制御因子として見出された。また、SLC29A3やRNaseT2のノックアウト(KO)マウスを作製したところ、顕著なマクロファージの増殖および蓄積(Histiocytosis)が認められた。平成30年度はこれらマウスとTLR7のダブルKOマウスの作製および解析を行った。その結果、SLC29A3KOマウスにおけるHistiocytosisはTLR7依存的であることが明らかとなった。一方、RNaseT2KOマウスのHistiocytosisにTLR7は関与せず、TLR13が必須であるというデータが得られた。この結果は、RNaseT2がTLR13応答の抑制に重要であることを示唆している。
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