昨年度までの解析から、TAK1欠損マクロファージはTLRリガンドであるLPSやpoly(I:C)あるいはTNFalpha刺激に伴いCaspase8依存的に細胞死を起こすことが判明し、このため当初アポトーシスによる細胞死であるものと考えられた。そこでこの細胞死誘導機構の詳細についてさらに解析を進めたところ、Caspase8/3のみならずCaspase1も活性化されること、そしてCaspase1の下流で制御されるGasdermin D(GSDMD)のタンパク分解が誘導されることを見出した。GSDMDの分解産物は、近年炎症性細胞死として注目されるパイロプトーシスの直接的誘導因子として機能することが示されてきた。このことからTAK1欠損マクロファージに見られた細胞死は、実はアポトーシスではなくパイロプトーシスによるものであることが判明した。次にTAK1欠損マクロファージにおいてパイロプトーシス誘導に関与する分子を特定するため、TLR下流に位置するTRIF分子に着目し、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を利用してTRIF欠損背景下マクロファージ特異的TAK1欠損マウスを作成した。TAK1xTRIF二重欠損骨髄マクロファージを用いて解析したところ、LPS及びpoly(I:C)刺激による活性化Caspase8及び1の産生やGSDMDのタンパク分解が全て抑制されること、そして細胞死が完全に抑制されることを見出した。一方で、TNFalpha刺激に伴う細胞死はTAK1欠損マクロファージ同様観察された。これらの結果を総合すると、マクロファージにおいてこれまで知られていなかったTLR/TRIF/Caspase8/Caspase1/GSDMDシグナル伝達経路による炎症性細胞死誘導機構が存在すること、そしてこの経路をTAK1が抑制することで炎症反応を負に制御していることが判明した。
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