研究課題
IgGはFc領域にN型糖鎖(Fc-N glycan)を有し、その末端シアル酸がIgGによる炎症作用を調節しているという報告がある。そこで、我々は関節リウマチ(RA)で産生される自己抗体IgGのシアル酸に注目し、自己抗体がどのようにRA病態に関与するのかを明らかにする。シアル酸付加IgGのin vivoでの影響を明らかにするため、活性型B細胞で限局的に発現するST6Gal1 とB4GalT1遺伝子の強制発現マウス(ST6Gal1LSL-Tg x B4GalT1LSL-Tg x AID-Creマウス)を作製したが、産生されたIgGの糖鎖構造に変化は認められなかった。糖鎖のガラクトース末端のシアル酸をa2.6結合で付加する糖転移酵素遺伝子として、これまでにST6Gal1遺伝子とST6Gal2遺伝子が同定されている。そこで、それぞれのKOマウスと両方欠損したDKOマウスを作成し、IgG上のシアル酸を付加する酵素について検討したところ、IgG上のシアル酸はST6Gal1遺伝子のみに依存して、付加されることが明らかになった。よって今後のIgGシアル酸改変マウスはST6Gal1遺伝子をターゲットにして作成することにした。また、RA自己抗体上のシアル酸付加による抗炎症効果が、普遍的なメカニズムかを検討するため、その他の自己免疫疾患(腎疾患)の自己抗体においても同様に、人為的なシアル酸転移酵素遺伝子の操作を行い、シアル酸付加自己抗体を作成した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、マウスレベルによるST6Gal遺伝子の検討やIgGシアル酸の普遍的な分子メカニズム解明のためのシアル酸付加、または欠損抗体作成を行っており、現在までに研究は概ね順調に進んでいる。しかし、活性型B細胞で限局的に発現するST6Gal1 とB4GalT1遺伝子の強制発現マウス(ST6Gal1LSL-Tg x B4GalT1LSL-Tg x AID-Creマウス)を作製したが、産生されたIgGの糖鎖構造に変化は認められなかった。よって、コンストラクトの構造から再度検討し、現在新規Tgマウスを作製中である。
上記のように、活性型B細胞で限局的に発現するST6Gal1 とB4GalT1遺伝子の強制発現マウスを再設計するため、マウス作製受託機関との共同研究を展開し、マウスの作製を進めていく。IgGシアル酸の普遍的な分子メカニズム解明のためのシアル酸付加、または欠損抗体作成し、その分子メカニズムを検討する。またその他の自己免疫疾患での有効性も腎炎モデルを用いて検証していく。
理由:活性型B細胞で限局的に発現するST6Gal1 とB4GalT1遺伝子の強制発現マウスの新たな作製費用が必要なため。使用計画:上記の計画に沿って、必要な消耗品の購入やマウスの維持費等にあてる。また、必要な研究打ち合わせ、学会発表等の費用としても使用したい。
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