炎症・免疫反応時には、さまざまな種類の炎症・免疫細胞がそれぞれ異なる時間経過で局所に浸潤する。なかでも、体の外面を覆う皮膚と内腔を覆う粘膜は感染防御に必須の生体バリアとして機能するが、種々の抗原と接触することでアレルギーが誘発される場でもある。細胞の局所への浸潤は、血管内皮細胞表面でのローリング・活性化・強固な接着・内皮細胞間隙への潜り込み・組織内での移動といった連続したステップを経て起き、セレクチンなどの細胞接着分子やケモカインなどの細胞遊走因子が関与する。本研究は、生体バリアとして機能する皮膚と粘膜局所への細胞浸潤について、その分子機構や時空的制御を解明することが目的である。 生体バリアへの細胞浸潤を解析するモデルとして、これまでにアレルギー性鼻炎マウスを作製し、鼻腔への抗原投与時に鼻粘膜でケモカインCCL28が誘導され、その受容体であるCCR3およびCCR10を発現するエフェクター/メモリー型CD4 T細胞が浸潤すること、CCL28欠損マウスでは野生型マウスと比較してくしゃみなどの鼻炎症状が減弱し、鼻粘膜内のエフェクター/メモリー型CD4 T細胞数が減少することを見いだした。本年度は、他のケモカインについても網羅的に検討し、CCL28以外のCCR3リガンドのmRNA発現がアレルギー性鼻炎マウスの鼻粘膜で上昇することを見いだした。さらに、リガンドタンパク質の鼻粘膜での発現も上昇したことから、複数のCCR3リガンドがアレルギー性鼻炎の病態に関与することが示された。
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