研究課題
2型自然リンパ球(Group 2 innate lymphoid cell:ILC2)は抗原受容体を持たない新規に同定されたリンパ球であり、喘息アレルギー疾患や寄生虫排除に重要な働きをしている。ILC2の分化にはサイトカインIL-7が必須であることが知られているが、ILC2の分化を支持するIL-7産生ストローマ細胞は未だ同定されていない。本研究は、IL-7遺伝子座に蛍光タンパクGFPをノックインしたマウス及び、ストローマ細胞特異的IL-7遺伝子欠損マウスを用いて、ILC2の分化・機能獲得の場となるIL-7産生性の局所的環境(ニッチ)を同定し、自然リンパ球の分化を制御する機構を明らかにすることを目的とする。本研究成果により、気管支喘息や寄生虫感染症などの疾患に対して、ニッチ細胞特異的にIL-7産生を薬物で調節し、自然リンパ球の発生をコントロールする治療法の開発が可能になると予想される。本年度は、IL-7-GFPノックインマウスの骨髄ストローマ細胞分画をFACS解析し、骨髄IL-7産生ストローマ細胞を網羅的に同定した。また、種々のストローマ細胞特異的なIL-7欠損マウスを用意し、骨髄ILC2の細胞数を調べた。次に、細胞数の減少が見られた系統において、リン酸化STAT5の発現量、BrdUの取り込みやBcl-2の発現量を解析した。以上のことから、ILC2の分化を支持する骨髄微小環境が徐々に明らかになりつつある。
2: おおむね順調に進展している
当該年度に計画していたIL-7-GFPノックインマウスを用いた骨髄ストローマ細胞の網羅的解析は、ほぼ予定通りに実施することが出来た。また、各種ストローマ細胞でIL-7を欠損させたマウスで骨髄ILC2の解析も予定通りに進んでおり、ILC2の分化を支持する骨髄微小環境が明らかになりつつある。
CHILP 及びILC2Pが各間葉系細胞と接触する頻度について蛍光顕微鏡観察し、ニッチとなるIL-7産生性の間葉系細胞を特定する。また、ケモカイン受容体の発現解析から、間葉系ニッチ細胞との接触の分子メカニズムを明らかにする。次に、ニッチ細胞から産生されるIL-7が、ILC2のエフェクターサイトカイン産生機能の獲得に影響するか調べる。そのため、各間葉系細胞特異的IL-7欠損マウスに対し喘息モデルを適用し、症状の軽減やIL-5、IL-13の産生低下を調べることによって、ニッチ細胞由来IL-7による寄与があるかどうか判断する。更に寄生虫を各系統マウスに播種し、排虫機能の低下が見られるかどうか比較検討する。
高額抗体が廉価で購入可能となったため当該助成金が生じた。
翌年度分として請求した助成金と合わせて、直接経費の殆どは消耗品購入に充てる。組織からのストローマ細胞回収に酵素、磁気ビーズ、MACSカラムを使用し、フローサイトメーターでの細胞集団の解析に多種類の抗体が必要となる。また骨髄の切片染色実験にも多数の抗体を使用する。更に、種々のCreマウスの実験を計画しており、解析用個体を準備するための純系マウス購入費と、飼料準備のための経費が必要である。実験用器具として、チューブ、チップ、注射筒、組織切片用スライドガラスなどの消耗品を購入する予定である。また、実験全般に用いるアルコール類が必要な実験試薬である。その他は、学会発表に必要な旅費や研究成果投稿料として充てる予定である。研究代表者が所属する京都大学ウイルス・再生医科学研究所には、本研究で必要となる大型機器が全て備えられている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Immunity
巻: 45 ページ: 1219-1231
doi: 10.1016/j.immuni.2016.11.004.
http://www.infront.kyoto-u.ac.jp/
http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/Ikuta-Lab/index.html