研究課題
申請者は、全身性エリテマトーデス(SLE)で認められる高親和性自己反応性B細胞は、体細胞超変異(SHM)により、その反応性を増大させていることを明らかにしてきた。しかし、臨床検体の観察では、自己反応性B細胞の出現の場やその後の分化を調べることができない。本研究では、生体での自己反応性獲得の実態を明らかにするため、低親和性抗ssDNA BCRノックイン(KI)マウスを作製した。モノクローナル抗体121G9は、急性期SLE患者検体より得た自己抗体で、dsDNAおよびssDNAいずれにも強く結合する。H鎖、L鎖に複数のアミノ酸置換を伴うSHMを有し、これらをgemline配列に戻すとDNAへの結合が大きく減少した。この121G9 germline配列(H鎖、L鎖)を免疫グロブリン遺伝子座へ挿入したG9gl KIマウスを作製した。G9glマウスのヘテロ接合体では、一部のB細胞で異常なVDJ組換えが起こっており、その結果、挿入したKI BCRを発現していないB細胞が約50%存在したが、ホモ接合体では、ほとんどの成熟B細胞でKI BCRが発現していた。このG9gl B細胞は、ssDNAに反応して、細胞質内カルシウムイオン濃度を上昇させたり、ssDNAに応答して、増殖することが確認できた。G9gl B細胞は、in vitroで、野生型B細胞と同等に、クラススイッチと抗体産生を起こした。従って、G9gl B細胞はアナジーには陥っていない。生体において、このG9gl B細胞が体細胞変異を獲得し、高親和性抗dsDNA抗体を産生する条件を検討し、制御性T細胞の除去によって、G9gl KIマウスで高力価の抗DNA IgG抗体が産生されることを見出した。現在は、制御性T細胞の除去によって、G9gl B細胞がどのように自己反応性を増強させているのか、解析を続けている。
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