研究課題
免疫レセプターは種間および種内で遺伝子の数やアミノ酸配列が異なり非常に多様性に富む。一部の免疫レセプターが病原体分子を認識することから、免疫レセプターは病原体の選択圧によって多様化してきたことが考えられる。しかしながら、免疫レセプターの多くが機能やリガンドが未知であり、どのような病原体が宿主の免疫レセプターへの選択圧になったのかはほとんど明らかではない。そこで本研究では、種間および種内で多様性を示す免疫レセプターに着目し病原体との相互作用解析を通して感染症における免疫レセプターの役割を解明する。組換えタンパク質およびレポーター細胞を用いて、各種免疫レセプターの標的分子の探索を行ったところ、抑制化レセプターLILRB1が熱帯熱マラリア原虫感染赤血球に結合することを見出した。マラリア原虫感染赤血球上に発現するLILRB1のリガンドを同定するために、免疫沈降法によってLILRB1-Fcと共沈してくるタンパク質を質量分析で解析したところ、LILRB1と共沈するタンパク質としてRIFINが同定された。RIFINの免疫細胞における影響を調べたところ、RIFINはLILRB1を発現するB細胞およびNK細胞の機能を抑制した。さらに、LILRB1によるマラリア原虫感染赤血球の認識がマラリアの病態にどのように関わっているのかを調べるために、タンザニアのマラリア患者由来の感染赤血球とLILRB1との相互作用を解析した。その結果、軽症マラリア患者と比べて、重症マラリア患者由来の感染赤血球は、有意にLILRB1に結合しやすいということが明らかとなった。本研究から、熱帯熱マラリア原虫は宿主の免疫から逃れるために、宿主の抑制化レセプターを標的にして、多様なRIFINを獲得し進化してきたことが考えられる。
3: やや遅れている
平成29年度は、抑制化レセプターLILRB1とマラリア原虫感染赤血球との相互作用を推進したが、前年度見出した活性化レセプターCHRと病原微生物との相互作用を当初の計画通りに十分に進める事ができなかったため、やや遅れている。
活性化レセプターCHRと病原微生物との相互作用を解析するために、補体抑制因子の組換えタンパク質を作製し、どのような病原微生物が補体抑制因子を結合し、補体免疫から逃れているのかを明らかにする。さらに、これまでに機能未知であったヒト活性化レセプターCHRの組換えタンパク質を作製し、どのような病原微生物を認識するのかを明らかにする。
活性化レセプターCHRと病原微生物との相互作用を当初の計画通りに十分に進める事ができなかったため。また、予想以上に条件検討に時間を要し、当初の計画通りに十分に進める事ができなかった。研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、活性化レセプターCHRと病原微生物との相互作用を解析するための器具や試薬、培養液等の消耗品に充て、当初の予定通りの計画を進めていく。
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