研究課題
免疫レセプターは種間および種内で遺伝子の数やアミノ酸配列が異なり非常に多様性に富む。一部の免疫レセプターが病原体分子を認識することから、免疫レセプターは病原体の選択圧によって多様化してきたことが考えられる。しかしながら、免疫レセプターの多くが機能やリガンドが未知であり、どのような病原体が宿主の免疫レセプターへの選択圧になったのかはほとんど明らかではない。そこで本研究では、種間および種内で多様性を示す免疫レセプターに着目し病原体との相互作用解析を通して感染症における免疫レセプターの役割を解明する。昨年度に引き続き、組換えタンパク質およびレポーター細胞を用いて、各種免疫レセプターの標的分子の探索を行ったところ、活性化レセプターCHRのリガンドが血清中に存在することを見出した。血清に含まれるCHRのリガンドを同定するために、免疫沈降法によってCHR-Fcと共沈してくるタンパク質を質量分析で解析したところ、CHRと共沈するタンパク質として補体抑制因子が同定された。病原微生物は宿主の補体免疫から逃れるために補体抑制因子を細胞表面に結合する事が知られているが、本研究により、宿主側はこの病原微生物の補体免疫逃避機構に対抗するために補体抑制因子を結合した病原微生物を認識する活性化レセプターCHRを進化させてきた可能性が考えられる。免疫沈降によって同定された補体抑制因子は、1種類であったが、複数種類の補体抑制性因子が知られているため、どの補体抑制因子をCHRが認識するのかについて明らかにするために、補体抑制性因子の組換えタンパク質を作製し、CHRのレポーターアッセイを行ったところ、補体抑制因子1、2がCHRと相互作用し、レポーター細胞を活性化させることが明らかとなった。本研究から、補体抑制因子を介して活性化レセプターCHRは感染防御に関わる可能性が示唆される。
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