研究課題/領域番号 |
16K08843
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森 正彦 長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員研究員 (50643988)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HIV / HLA / KIR / アジア / アフリカ |
研究実績の概要 |
1.タイ国HIV感染者の予後を規定する因子の同定: タイ国成人HIV感染者209名を対象に解析を行い、免疫担当細胞へ病原体抗原を提示するHLAのうちHLA-B*46:01を持ち、その提示された抗原を認識するNK細胞受容体のうち細胞活性を抑制するKIR2DL2を持つ者(HLA-B*46:01+KIR2DL2+)で感染後の臨床経過悪化を確認した。特にHLA-B*46:01はアジア人固有のHLA型であり、既知のアフリカ系・欧米系を中心とした情報とは異なる新たな発見であった。これらの結果は論文化しJAIDS(Journal of AIDS)へ採択され、近日発表される予定である。 2.南アフリカ国HIV感染者の予後を規定する因子の同定: 同様に南アフリカ国成人HIV感染者312名を対象に解析を行い、HLA-C*16:01+KIR2DL3+陽性者での臨床経過悪化を同定した。現在これら情報は論文投稿に向け原稿を作成中である。 これら結果を踏まえ、NK細胞を抑制する受容体を通じた抗原認識は免疫担当細胞を抑制し、結果HIV感染者の臨床経過を悪化させているものと思われる。近年新たな癌治療として、疲弊した免疫担当細胞を再活性化する治療法(免疫療法)が開始され、一定の成果を得ている。今後HIVに対してもこれらHLA-抑制系KIRの経路を遮断・抑制する事でより抗HIV免疫を活性化させる可能性が期待され、新たなワクチン・治療薬開発の候補として期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ国HIV感染者に関する研究で解析が完了し、投稿した原稿が採択され、近日発表される為。 南アフリカ国感染者側では現在患者情報の収集を継続し、一部解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
南アフリカ国感染者での患者情報収集・解析を進め、論文投稿を目指す。検体・臨床情報追加が必要な際には現地へ赴き、収集を行う予定である。 南アフリカ国の結果を踏まえ、タイ国の結果と比較・解析を行い、人種間における抗HIV免疫の共通点・相違点を解明し、ワクチン開発の一助とす。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)タイ国側の患者情報は英文校正費を含む論文作成までに至ったが、南アフリカ国側は解析のまとめ・論文作成までに至らず、それらの経費使用に至らなかった。 (使用計画)南アフリカ国での患者検体・情報収集、英国でのそれら情報の解析と論文作成への使用を計画している。
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