研究課題/領域番号 |
16K08844
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田中 義正 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (90280700)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肺がん / 成人T細胞白血病 / 乳がん / PD-1 / PD-L1 / がん免疫療法 / IL-18 / γδ型T細胞 |
研究実績の概要 |
健常人、肺がん患者、成人T細胞白血病患者、乳がん患者から末梢血を取得し、フィコール濃度勾配遠心分離により単核球を調製した。これをYssel培地に懸濁し、PTA/IL-2/IL-18で増殖誘導した。11日間培養後、Vγ2Vδ2型のγδ型T細胞を回収し、細胞表面マーカーの検討を行った。具体的には、CD3、CD4、CD8、Vδ1、Vδ2、CD56、NKG2D、DNAM-1、FasL、TRAIL、CD16、PD-1、PD-L1抗体で細胞を染色し、フローサイトメトリー解析を行った。次に、PD-L1を発現するDaudiバーキットリンパ腫細胞を用いて、PD-1発現γδ型T細胞の抗腫瘍効果を検討した。細胞障害性検定にはテルピリジン誘導体を用いた非RIアッセイシステムを用いた。次にin vivo解析を行った。まず、ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだPD-L1発現腫瘍細胞をNOGマウスに投与した。これに、PD-1を発現するγδ型T細胞を投与し、さらに、抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体を投与した。そして、ルシフェリンを投与することにより、腫瘍細胞の消長をphoton fluxにより観察した。その結果、PD-1発現γδ型T細胞の抗腫瘍作用を抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体で増強できることが明らかとなった。次に、γδ型T細胞を効率的に取得できる方法を確立することががん免疫療法を行う上で重要な技術となることから、PTAによるγδ型T細胞のex vivo培養条件の検討を行った。具体的には、末梢血単核球をPTA、IL-2/IL-18で刺激する際の、添加物濃度、添加のタイミング、培地の選択、培養皿コーティング剤の選択、培養時間などの詳細な検討を行った。その結果、PTA、IL-2、IL-18の最適培養濃度はそれぞれ、1μM、100 U/ml、100 ng/mlであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人、肺がん患者、成人T細胞白血病患者、乳がん患者からICを取得し、末梢血を予定通り採取できた。また、フィコール濃度勾配遠心分離により単核球の調製も予定通り行った。さらに、末梢血単核球をPTA/IL-2/IL-18で刺激した結果、γδ型T細胞を効率的に増殖誘導することが可能であった。11日間培養後のVγ2Vδ2型のγδ型T細胞を回収し、細胞表面マーカーの検討を行った結果、IL-18の作用により、γδ型T細胞にAPC用のマーカーが発現し、予想通りの結果となった。次に、PD-L1を発現するDaudiバーキットリンパ腫細胞を用いて、PD-1発現γδ型T細胞の抗腫瘍効果を検討した結果、予想通り、中程度の細胞障害性が見られたが、ここに抗PD-L1抗体を投与した結果、細胞障害性が更新され、予想通りの結果となった。次にin vivo解析において腫瘍細胞の消長をphoton fluxにより観察した結果、予想通り、PD-1発現γδ型T細胞の抗腫瘍作用を、抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体で増強できることが明らかとなった。さらに、PTAによるγδ型T細胞のex vivo培養条件の検討を行った結果、PTA、IL-2、IL-18の最適培養濃度はそれぞれ、1μM、100 U/ml、100 ng/mlであることが明らかとなり、次年度以降の研究のために必要な知見はすべて得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、PD-1免疫チェックポイント阻害剤と相乗作用を示す高分子製剤の探索を行う。まず、高分子製剤の探索を行うが、その前に本当にその方針で正しいのかに関してIL-18とPD-1免疫チェックポイント阻害剤との相乗作用を検討する。IL-18はもともとIFN-γ誘導因子として発見されたが、その本当の作用は長い間不明であった。その後、ミトコンドリアに作用し、Bcl-XLの発現を亢進し、細胞保護を行う分子であることが明らかとなった。このことから、Bcl-XL機能亢進作用があるIL-18をPD-1免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせることにより、どの程度の抗腫瘍効果の亢進があるのか詳細に検討する。まず、in vitroの検討においては、成人T細胞白血病患者由来の末梢血単核球に第4世代ビスホスホン酸とIL-2/IL-18を作用させ、10日後にATL細胞がどの程度減少しているか検討を行う。次にin vivoの検討においては、担がんマウスに抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体を投与し、その際、IL-18投与により腫瘍増殖がどの程度遅延するか検討を行う。このようにして、IL-18の相乗作用が明らかになった場合には、IL-18のavidity増強を行う。まず、IL-18の2量体を作成し、そのavidity変化を確認する。そして、その2量体化の効果が確認された場合には、4量体の作成を行う。その際には、通常のBirA/Streptoavidin法とTamavidin法を用いる。そして、このIL-18タンパク4量体を用いて、上記in vitroおよびin vivo試験を行いPD-1免疫チェックポイント阻害剤との相乗作用に関して検討を行う。
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