クロマチン制御因子であるTRIM28分子をマウスのTリンパ球で特異的に欠失させると、自己反応性のIL-17産生性ヘルパーT細胞(Th17)が分化、活性化し、自己免疫疾患を発症して早期に死亡することを報告している (Chikuma et al. Nat.Immunol. 2012) このマウスに起こる疾患は、さまざまな臓器に対するポリクローナルな自己反応性T細胞の活性化が想定されるものであったため、特定の臓器に反応するT細胞の活性化、およびTh17への分化を詳細に解析するため、臓器特異的なTCRトランスジェニックマウスにTRIM28KOを交配し、この効果を検討した。これらのマウスでは、一見体内に存在する自己抗原に対し、T細胞が反応しないという、典型的な自己免疫寛容状態が成立することがわかった。このマウスに、免疫寛容を破綻させるような処置を検討したところ、いくつかの薬剤によって免疫寛容がやぶれ、重い自己免疫症状を誘導できることがわかった。発症マウスの患部に集積したT細胞は、インターフェロンγとIL-17の両方を強く発現し、文献的に言われる「病原性Th17」であることがわかった。 これとは別に、新規自己免疫性膵炎モデルを確立し、制御性T細胞におけるPD-1分子の役割を明らかにするという、前科研費で得られた知見を論文発表することができた。
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