研究課題
本研究ではマウスインフルエンザウイルス感染モデルを用いて、肺滞在型メモリーCD8T細胞維持機構を解明すること目的とする。肺気道及び肺実質の滞在型メモリーCD8T細胞に関して、メモリーCD8T細胞形成後に2週間BrdUを飲水投与し細胞へのとりこみを検討した結果、両組織のメモリーCD8T細胞にて一定の取り込みが確認された。一方、増殖サイクルに入った細胞を蛍光タンパクの発現パターンにて識別可能なFucciトランスジェニックマウスを用いた解析を行った結果、両組織共に増殖細胞は確認できなかった。これらの結果は、両組織にて非常にゆっくりしたサイクルにてメモリーCD8T細胞の恒常性増殖が起こっていること、もしくは肺実質にて恒常性増殖した細胞が肺気道に移行しているという可能性が示唆された。一方、両組織の抗原特異的メモリーCD8T細胞をソートし、T細胞受容体のクロノタイプを比較したところ、肺気道と肺実質の細胞にて高頻度にクロノタイプの一致が見られたが、脾臓の細胞とはほとんど一致しなかった。このことは、肺気道のメモリーCD8T細胞は肺実質のメモリーCD8T細胞が移行したもの、即ち、肺実質にて恒常性増殖を起こした細胞の一部が肺気道に移行していることが示唆された。また、ケモカインレセプターCXCR6欠損マウスを用いた解析にて、肺気道に維持されるメモリーCD8T細胞数を調べたところ、野生型と比較しCXCR6欠損メモリーCD8T細胞が若干減少していることが解った。このことは、肺実質から肺気道への移行にCXCR6が関わっていることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
研究は概ね予定通りに進んでいる。
肺実質のメモリーCD8T細胞のほとんどは活性化型の表現系を示すことより、この組織に残存する抗原にて持続的な刺激を受けていることが示唆される(局所における再活性化)。また、CXCR6発現はこの再活性化メモリーCD8T細胞にて顕著に増加していることより、肺実質におけるメモリーCD8T細胞の再活性化がCXCR6発現上昇を誘導し、結果肺気道への移行を促進している可能性が示唆される。そこで、今年度は肺実質にて残存抗原を提示していると予測される樹状細胞をメモリーCD8T細胞形成後に除去することが、メモリーCD8T細胞の再活性化、CXCR6発現、そして肺気道移行への移行にどのような影響を及ぼすかを検討する。また、通常のウイルス感染のみならず、増殖欠損型インフルエンザウイルスの感染でも残存抗原提示を誘導できるのか、また、メモリーCD8T細胞の誘導・維持はどのように変化するのかを検討する。更に、恒常性増殖におけるIL-15の役割を検討するため、IL-15欠損マウスを用いた感染実験にて肺メモリーCD8T細胞数の変化、及び、BrdU取り込みの変化を検討する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
J Exp Med.
巻: 13 ページ: 3057-3073
10.1084/jem.20160938
http://www.med.kindai.ac.jp/immuno/