研究課題
本研究では、肺に長期間滞在し、二次感染時における感染防御免疫に重要な役割を果たす滞在型メモリーCD8T細胞の維持機構を解明すること目的とし、マウスインフルエンザウイルス感染モデルを用いて検討を行った。申請者は、2匹のマウスを外科的に結合することで循環系を共有させるパラビオーシス法を用いてインフルエンザウイルス感染マウス同士を結合し、長期間循環系を共有させたにもかかわらずパートナー由来細胞の侵入を拒絶し続ける部位(即ち滞在型細胞が存在)を指標に、肺における滞在型メモリーCD8T細胞の局在を調査した。その結果、肺滞在型メモリーCD8T細胞はこれまで考えられていた誘導型肺気管支関連リンパ組織(inducible bronchus-associated lymphoid tissue: iBALT)にはそれほど存在せず、大部分が肺組織損傷後に形成された修復課程の組織(二次感染時に最も防御すべき部位)に局在していることを発見し、この部位をRepair-associated memory depot: RAMDと命名した。また、RAMDには明確な肺滞在型メモリーCD8T細胞維持数許容限界(ニッチ)が存在し、感染後約10日目(肺におけるCD8T細胞免疫応答のピーク、即ち局所組織傷害のピーク)までにRAMDに浸潤・定着したCD8 T細胞が優位に肺滞在型メモリーCD8T細胞へと分化することを突き止め、これらを論文に発表した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究は順調に進展している。
申請者は、インフルエンザウイルス感染早期(10日目以内)にRAMDに蓄積した抗原特異的CD8T細胞が後にCD8 TRMに分化することを突き止めた。従って、この間にCD8T細胞は肺局所にてCD8 TRM分化に必要なシグナルを受領していると考えられる。この時期のCD8T細胞は感染により局所に浸潤したマクロファージと共局在していることから、肺マクロファージがCD8 TRM分化に関わっている可能性が示唆される。したがって、感染早期の肺マクロファージを除去することで肺マクロファージがCD8 TRM分化に関わっているかを検討する。また、マクロファージがCD8 TRM分化を促進する因子として、局所抗原刺激の重要性、更にはTGFの重要性も検討する。
消耗品(蛍光標識抗体)が予定より若干効率よく使用できたが、余剰分の消耗品は次年度に使用予定である。
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