研究課題/領域番号 |
16K08851
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
多根 彰子 (橋本彰子) 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (10415226)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己免疫 / T細胞受容体シグナル / 脱リン酸化酵素 / 蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
研究計画 [1] PTPN22(Lyp)および PTPN2(TCPTP)の細胞内動態を観察した。PTPN2は核や小胞体に局在して活性化部位に優位に集まる事はなく、PTPN22および PTPN2の欠損によってTCRクラスターに変化が現れる事もなかった。しかしPTPN22はTCRミクロクラスターに共局在するクラスターを形成した。PTPN22のクラスター形成は30秒程度の遅れを持っており、ネガティブフィードバックとして機能していることが示唆された。 また、PTPN22-strep-tagノックインT細胞を用いて、沈降反応とマススペクトル解析を行い、PSTPIPなどの結合分子を同定した。興味深いことに、同定された分子の多くはホスファターゼ関連分子であり、それらはPTPN22と一緒にクラスターとなってTCRミクロクラスターに集合したことから、PTPN22を含むネガティブコンプレックスが形成されていることが明らかになった。 並行してT細胞活性化に依存した遺伝子発現パターンなどを解析した所、PTPN2欠損T細胞において、これまで報告があったIFNgのみならず、多くのサイトカインやケモカインの発現が上昇していた。 研究計画 [2] 上記で解明した細胞内機構について生体内での意義を検証するため、PTPN22および PTPN2のT細胞特異的欠損マウスを自己免疫疾患に感受性の高い129系統に戻し交配した。PTPN22欠損の場合は自発的な皮膚炎がとても低い(5%以下)頻度でみられた。一方、PTPN2の場合はT細胞特異的欠損であるにも関わらず、生後1-4週間で死亡してしまい、原因を解析中である。 また、研究対象として自然発症では制御が困難であるため、B6系統欠損マウスを用いてコラーゲン誘発性関節炎モデルなどを開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の内容以上の成果が得られており進展している。しかし動物モデル実験だけは動物の事情によって遅れた部分もあるので、概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画 [1] PTPN22を含むネガティブコンプレックスについて追求する。このコンプレックスには多くの自己免疫疾患との相関が示されている他のホスファターゼが複数含まれており、普遍的な重要性を持つ可能性が高い。現在、他のホスファターゼのノックアウトマウスを入手し、PTPN22とのダブル欠損マウスを作成中である。 遺伝子発現パターンに大きな変化があったPTPN2に関しては、PTPN2のターゲットを明らかにするため、改めて細胞内シグナルの検証をしている。過去に報告があったLckへの影響は小さく、他シグナルへの関与が強く示唆されている。 研究計画 [2] B6系統欠損マウスを用いてコラーゲン誘発性関節炎モデルを開始している。動物モデル実験は時間がかかるので、他にRag欠損マウスを用いた腸炎誘導モデルなども並行して行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画[2]で行っている動物モデル実験に関して、自己免疫疾患に感受性の高い129系統に戻し交配し自己免疫症状の自然発症を観察したが、予測に反して自然発症率が低く評価に半年程度の時間がかかった。そのため、次の手段として予定していた自己免疫誘発モデル実験に使用するマウスや試薬の経費を次年度に持ち越すことになった。
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