研究課題
本研究では、自己免疫疾患の関連分子である脱リン酸化酵素、PTPN22(Lyp)および PTPN2(TCPTP)、の機能解析を行った。PTPN22はT細胞活性化の開始点であるT細胞受容体(TCR)ミクロクラスターに、ネガティブフィードバックらしく30秒程度の遅れを持って集合した。マススペクトルを用いた結合分子探索では、既知のCskに加えて、STS-1, PSTPIPなどホスファターゼ関連分子が同定された。それら分子もTCRミクロクラスターに集合したので、PTPN22とネガティブコンプレックスを形成しTCR活性化を抑制すると考えられた。GWASでI型糖尿病等と高く相関したSNPS産物であるPTPN22(R619W)変異体は、CskやSTS-1との結合が弱く、TCRミクロクラスターへの集合も減少した事から、ネガティブコンプレックスが自己免疫性疾患の鍵となる事が推察された。一方、PTPN2は核や小胞体に局在し、細胞膜と接する様子は観察されず、TCRやサイトカイン受容体近傍で機能すると考えられてきたイメージを覆した。PTPN2欠損T細胞の遺伝子発現パターンを解析した所、既知のIFNgに加え、多くのサイトカインやケモカインの発現が上昇し、結合分子探査ではimportinなど基本的な細胞機能に関わる分子が検出された。従ってPTPN2は受容体から離れた場所で広いターゲットに作用すると考えられ、引き続き研究課題としている。PTPN22およびPTPN2欠損マウスのT細胞を並行して解析した結果、両者の共通点として、炎症性であるIL-6、IFNg、CCL3、CCL4の産生が亢進し炎症を起こしやすい性質が予測された。一方で抑制性サイトカインIL-10も上昇した事から、抑制された炎症が持続的に継続し自己免疫性疾患の発症に至る、というモデルが想定された。これらの考察は今後の研究に繋げる。
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Science Signaling
巻: 12(567) ページ: aav4373
10.1126/scisignal.aav4373