我々は昨年度、STINGのリガンドcGAMPによるmTORC1シグナル(4E-BP1、S6K1)の抑制がT細胞の増殖抑制に重要なことを示したが、cGAMPとTCR/CD28刺激によるI型インターフェロン(IFN-I)の産生におけるmTORC1シグナルの役割は明らかでない。そのためmTORC1阻害剤のrapamycinでT細胞を処理した時のcGAMPとTCR/CD28刺激によるIFN-Iの産生を調べたところ、rapamycin存在下でIFN-Iの産生が強く抑制された。これらの結果からcGAMPによるmTORC1シグナルの抑制は部分的であることが示唆されたが、実際、cGAMPによる4E-BP1のリン酸化の抑制がrapamycinと同程度であるのに対して、S6K1のリン酸化の抑制は部分的であった。そこでT細胞をS6K1の特異的な阻害剤で処理したところcGAMPとTCR/CD28刺激によるIFN-Iの産生が強く抑制された。以上の結果からcGAMPがTCR/CD28刺激によるmTORC1シグナルを部分的に抑制することによりT細胞の増殖抑制が誘導されるとともにIFN-Iの産生が誘導されることが示唆された。 cGAMPによる抗腫瘍効果にIFN-Iの産生が重要であることが報告されているため、T細胞特異的にSTINGを欠損させたマウスを作製し、cGAMPによる抗腫瘍効果を調べたところT細胞特異的なSTING欠損マウスの生存率は対照マウスと比較して悪く、腫瘍の増殖も高いことが認められた。このことからT細胞のSTINGがcGAMPによる抗腫瘍効果に重要であることが示唆された。 これまでの成果からT細胞のSTINGとTCRのシグナルはmTORC1を介して相互に影響し合うことにより、シグナルのアウトプットが決定し、そのことがcGAMPによる抗腫瘍免疫に重要であることが示唆された。
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