本研究の目的は安全で実効ある「診療参加型臨床実習」を確立するために、研修医による学生教育の現状と課題、対策を明らかにして、実現可能な診療参加型臨床実習のカリキュラムを作成し行うことである。そのため、診療チームの一員として医学生を教育する「診療参加型臨床実習」を既に経験している指導医、研修医、医学生を対象に半構造化個別インタビューを用いて、研修医による医学生指導ではどのようなことが起こっているかについて探索的に調べた。インタビューデータは活字化して内容を分析した。 その結果、初期研修医が医学生の教育に関わる利点、欠点、必要な準備が明らかになった。短所の認識と対応をふまえて、学生教育へ積極的に初期研修医が加わる方がよいとの示唆が得られた。これらの知見と臨床実習にかかわる北海道内の病院施設の指導医へのヒアリング、道内3医育大学の実習担当職員の意見、関連する文献を踏まえて、診療参加型臨床実習のカリキュラムを作成した。 このカリキュラムには、北海道内の3医育大学で共通する学生評価(13項目のコンピテンシーを4段階の習熟度で分類するルーブリック形式)、主要な科での実習のやり方、医学生の医行為、実習病院の患者や職員に本実習を周知するポスターの作成が含まれ、このカリキュラムに基づいて実習を実施した。また、北海道内の地域の病院でも本実習を可能とする指導体制、宿泊、交通、連絡体制を整備し、ならびに、指導医や多職種による学生評価、学生や指導医による実習評価に関して、ウエブサイトを通じて入力し、集計ができるシステムを構築した。
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