研究課題/領域番号 |
16K08855
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加賀谷 豊 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90250779)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シミュレーション教育 / 心臓聴診 |
研究実績の概要 |
我々は医学科4年生に心臓病診察シミュレータを用いた3時間1回の少人数実習を行ってきた。3年間で324人を対象として行った実習中に、異なるタイプの2回の小テストを実施した。その結果、II音(分裂なし、呼吸性分裂、幅広い異常分裂)、III音/IV音(III音、IV音、III音+IV音)、心雑音(大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症)の3つのカテゴリーの何れに属する音かを予め知らせて聴かせると正解率が高いが、知らせないとII音/III音/IV音で正解率が著しく低下することを平成28年度に報告した。(Kagaya Y et al. J Cardiol 2016)。さらに、医学科1年次から心臓聴診トレーニングを開始することの有用性を検討した。参加を希望した医学科1年生15名を対象として、4年次と同じ内容の実習を90分間x3回で課外の時間に行った。4年生と同じ2つの異なるタイプの小テストを実習の最後に行った。終了後に無記名のアンケート調査も行った。その結果、3つのカテゴリーの何れに属する音かを予め知らせてから聴かせると、II音/III音/IV音と心雑音の正解率は、それぞれ84.4%と85.0%であり、4年生の正解率よりも高い傾向にあった。カテゴリーを知らせないで出題すると正解率は、それぞれ80.0%と60.0%であり、心雑音の正解率が1回目に比べて2回目に有意に低下した(P<0.05)。5段階の評定尺度の「強くそう思う」と「そう思う」を合わせると、15名中14名が「この実習が1年生で行うのに相応しい」と答えた。平成28年度の解析により、心臓聴診トレーニングを1年生から開始することの有用性が示唆された。4年生とは異なり、心臓弁膜症の雑音の2回目の正解率が1回目に比べて有意に低下したことから、低学年向けに聴診トレーニング法を改善する必要があるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医学科4年生に心臓病診察シミュレータを用いた3時間1回の少人数実習を行ってきたが、その解析結果を平成28年度に英文原著論文として報告することができた。(Kagaya Y et al. J Cardiol 2016)。また、新たに医学科1年次から心臓聴診トレーニングを開始することの有用性を検討するため、4年次と同じ内容の実習を90分間x3回で課外の時間に行い、4年生と同じ2つの異なるタイプの小テストを実習の最後に行った。その結果、心臓聴診トレーニングを1年生から開始することの有用性が示唆された。4年生とは異なり、心臓弁膜症の雑音の2回目の正解率が1回目に比べて有意に低下したことから、低学年向けに聴診トレーニング法を改善する必要性が浮かび上がった。
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今後の研究の推進方策 |
医学科4年生に心臓病診察シミュレータを用いた3時間1回の少人数実習を継続し、さらに本実習の有効性を上げるための方策を検討する。また、医学科1年次から心臓聴診トレーニングも継続し、4年次との違いを明らかにし、1年次に行う実習の問題点を明らかにし、改善すべき点を追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
医学科4年生の実習に関しては、予定通りの人数で実施したが、1年生の実習に関しては、課外の時間であったこともあり、予定していた人数よりも少ない人数であった。このような経過から、物品費等の支出が予定していた額よりも少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
医学科1年生の実習への参加を強く働きかけ、これにより物品費などの支出が増えることが予想され、支出額が前年度からの繰り越し分を加えた額になる予定である。
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