研究課題/領域番号 |
16K08856
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石井 誠一 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (60221066)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | プロフェッショナリズム / 医学教育 / 評価法 |
研究実績の概要 |
本研究では、医学科の学生を対象に、医療プロフェッショナリズム能力の評価法を開発し、プロフェッショナリズムの教育プログラムを提起する。H28年度は、学内倫理委員会の承認の下で、以下の研究を行った。 A.【医療プロフェッショナリズム能力の項目策定】<データの収集>研究代表者の所属医学部における医学科学生の、1年次・3年次の実習、3年次・4年次のグループ学習、共用試験OSCE、5年次臨床実習、並びに、カリキュラム外の活動の行為・行動の評価結果からデータを収集した。<データの分析>共用試験OSCEの評価と臨床実習での評価との関連を分析し、以下の3点が浮かび上がった。(1)4年次の共用試験OSCEの不合格者は、5年次の臨床実習は初年度で合格していた。(2)一方、臨床実習の不合格者は、共用試験OSCEは受験初年度で合格しており、臨床実習の不合格はプロフェッショナリズムに反する特定の行為に起因した。(3)以上より、共用試験OSCEの不合格と臨床実習の不合格は異なる因子に因ることが示唆された。臨床実習不合格判定とOSCE以外の評価との関連について、なお検討中である。続いて、4年次に10週間行っている臨床推論PBLのチューターによる学生評価と5年次臨床実習の評価の関連を分析した。両者には明らかな相関は認めなかったが、データ収集期間が1年のみなので、さらにデータを蓄積している。 B.【医療プロフェッショナリズム能力の評価ツール開発】先行研究から評価ツールを収集し、比較検討を進めている。 C.【プロフェッショナリズム教育のプログラム開発】国内医療教育機関の情報を得て、プロフェッショナリズム教育のプログラムを作成し、医学科初年次に導入した。過去の1年生の早期医療体験実習における教職員による評価から、学生の「良い点」、「改善が望まれる点」を1年生自身が分析し、共通項を抽出して実習に望む心構えとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の実施計画のうち、A.【医療プロフェッショナリズム能力の項目策定】は予定したデータを収集し、分析を順調に進めている。プロフェッショナリズムに反する行為についての情報が得られたので、今後、その骨子をまとめて「医学生が身に付けるべきプロフェッショナリズム」の項目を取りまとめる段階である。B.【医療プロフェッショナリズム能力の評価ツール開発】については、先行研究の評価ツールの収集を終えており、Aの結果を取り込んで、本研究独自の評価ツール開発に着手する。 C.【プロフェッショナリズム教育のプログラム開発】は、1年次カリキュラムに、ほぼ通年でプロフェッショナリズム教育を導入した。今後、プログラムを継続すると伴に、その効果について検証する予定である。 以上より、Aは予定通り進捗し、Bはやや遅れているものの、Cは予定を1年先取りして導入した。総合的に見て、H28年度の研究は、おおむね順調に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度は、医療プロフェッショナリズム能力の評価ツール案を作製する。医学科学生の評価に試験的に用いて、評価ツールの信頼性、妥当性、実用性等の分析に着手する。また、初年次教育に試験導入したプロフェッショナリズムのプログラムの効果と汎用性の検証を進める。 A.【医療プロフェッショナリズム能力評価ツール案の作製と試験運用】 B.【医療プロフェッショナリズム能力評価ツールの信頼性、妥当性、実用性等の分析】1)データ収集と分析:医療プロフェッショナリズム能力評価ツール案を用いて医学科学生の評価を試行し、OSCE, CBT, 卒業試験OSCE, MCQの成績、各種実習での評価等と比較する。2)データ分析と評価ツールの修正:集積したデータから、評価ツールの信頼性、妥当性、実用性等を分析し、その結果によりツールを改訂する。 CBTがあったため.【プロフェッショナリズム教育プログラムの効果の検証】医学科1年次に導入したプロフェッショナリズム教育を継続し、A.の評価ツールを用いて学生のプロフェッショナリズム能力の評価を継続し、経年的な変化を分析する。 D.【研究の総括】以上の研究を進めて、「医学科学生の医療プロフェッショナリズム能力の評価法」を確定し、同時に、「医療プロフェッショナリズムを形成する教育プログラム」を汎用化する。成果をホームページ、関連学会、医学教育関係者ネットワーク等で公開し、医学科学生の能力・適性のより適正な教育と評価の普及を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H28年度は評価データの収集・入力および分析のためパーソナルコンピュータを新規購入して使用した。入力は研究代表者が行うことができたのでアルバイト謝金が発生しなかった。また、学会発表については成果を発表した学会がシンポジウムでの指定講演であり、他の経費から旅費が支払われ、研究費からの支出が発生しなかった。以上により、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
H29年度は、物品費は消耗品に留め、学会発表と他の医療機関のプロフェッショナリズムの教育の視察・情報交換のための旅費と、データ入力のアルバイト謝金を計上する。また、成果の報告に資料等を作成するためその他の経費を計上する。
|