研究課題
我々はシミュレーターの遠隔操作による教育を方法論として確立し、現場に操作者がいる場合と同等の満足感があることを報告して来た。本研究ではこれまでに、小児救急医学の教育課程において、その核となる項目である「小児の心肺蘇生事象に対するチームアプローチ」を教育するにあたり、シミュレーションルームで対面式に指導(標準)する群と、遠隔から指導する(遠隔)群に分け、シミュレーション教育の効果について客観的指標を用いて比較検討した。仮説:医学生に対する小児急性期医療のシミュレーション教育が、チームワーク・コミュニケーションの技術を改善し、標準指導群と遠隔指導群では差がない。デザイン:シミュレーショントレーニング介入前後におけるパフォーマンスの比較。研究参加者:医学部5年生。方法:小児科臨床実習中の医学部5年生に2回のシナリオセッションを含む、60分間のシミュレーショントレーニングを行う。一次アウトカムは、参加者のチームワーク・コミュニケーションの改善であり、Behavioral Assessment Tool (BAT)を用いて測定した。BATは危機管理の視点から作成されており、リーダーシップの確立、環境を熟知すること、自らの限界を知ることなどの10項目が設定され、各々0点から4点の5段階で評価される(最高スコア40点)。結果:医学生に対する小児急性期医療のシミュレーション教育が、BATで評価されるチームワーク・コミュニケーションの技術を改善し、標準指導群と遠隔指導群では差がない。
2: おおむね順調に進展している
遠隔教育の導入によって他施設の指導者の教育方法を眼前にし、指導者同士の協働作業、学び、シナリオの共有が果たされ指導者育成の効果が期待できることが示された。小児救急医療のなかでスキルと同等に重要視されているチームワーク・コミュニケーションについて、チームによるシミュレーション教育が効果があることが示された。また指導者育成に効果的であることを検討しているが、さらなる検討が必要である。
今年度の成果をふまえ、さらに以下の項目について検討する1)医療安全の観点から以下の方法のとおりシナリオを作成し、シミュレーションを実施する(In situ Simulation)。2)指導の手法としてRapid Cycle Deliberate Practice: RCDPを採用し、従来の方法と比較して有効か否か検討する。
(理由)国内及び国際学会での公表を予定していたが新年度に一部ずれ込んだこと。(使用計画)国際学会での公表に充当する。
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10.1016/j.yjmcc.2017.11.019
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