研究課題/領域番号 |
16K08868
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤原 道隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (70378222)
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研究分担者 |
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
植村 和正 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40303630)
田中 千恵 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50589786)
藤井 努 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (60566967)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 外科 / 手術教育 |
研究実績の概要 |
外科系各分野で内視鏡手術が発展しているが,トレーニングの問題がある.本研究は,アウトカムbasedの新しい合理的なトレーニングコースを作成するものである. 現在の手術教育システムは,修得すべきアウトカムから必要な技術を分析して作成されたもので,理論的,効率的方法とは必ずしも言えない.また,シミュレータなどドライな訓練方法のみでは不十分と考えられていて,動物訓練など,時間,コスト,動物愛護,評価などの点で問題が多いウェットな手法がいまだに多く行われているという問題点がある.こうした現状に対し,instructional designの考え方を導入し,各術式が必要とする技術に分解し,細分化された構成単位に対してそれぞれ必要なモジュールを作成し,これらを再構成し新しい手術教育システムを作成する. 各術式の訓練コースを,必要タスクに応じたモジュールを組み合わせたものとすると,タスクを縦断したテーマ別コース(エナジーデバイス・コーズなど)を,訓練者の効率や興味も考慮して作成し,教育システムを二次元展開する. これまでのところ,各手術術式が必要とする技術の最少単位を定め,既存のモジュールを再評価した. 術式別トレーニングコースでは,まず,消化器外科医が最初に修得する腹腔鏡下胆嚢摘出術のコース設計を行った.上腹部手術後や胆嚢炎が強い,という難度が高い症例ではなく,炎症が少ない待機的胆嚢摘出術を自力で行えるというアウトカムを設定し,Merrillの二次元マトリックスにおけるRememberレベルをできるだけ少なくし,シミュレータを題材にtraineeと指導医が考えるコースとした.作成したトレーニングコースを実際に外科医師対象に行い,事後アンケートにより,手術実施状況などコースの効果について評価を行った.また,エナジーデバイス・コース作成のためにサーモグラフィーでデバイス試験を行い基礎的なデータを収集した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各手術術式が必要とするタスクの分析は,新たな教育モデルとしてアウトカムから再検討した.消化器外科にとって基本的な胆嚢摘出術においては,上述のようなアウトカムを設定し,そこから必要なタスクを抽出し,Merrillの二次元モデルの各層に当てはめてみた.一方,現有の教育リソースとして,現在,我々が保有するVRシミュレータ(Lap-SIM, LAP Mentor II, LapVR,ProMIS, LapX Hybrid)や臓器モデルのタスクを再検討して,必要スキルと対応させ,従来の教育法では比較的多くの時間がとられていたRememberレベルを少なくし,実技に重みをおいたシステムを構築できた.さらに,当初の計画では構想していなかったが,指導医をシステムに組み入れる方法を,アウトカムから検討して着想するなど,予定と違った展開もできた.さらに3年目に行う予定であったテーマ別コースについても,エナジーデバイスに関して,デバイスの発熱実験など行いコース作成のための基礎的知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度作成した腹腔鏡下胆嚢摘出術トレーニングコースは,バーチャル・リアリティ(VR)シミュレータのモジュールを題材に,一部ティッシュも取り入れ,指導医も同時に教育方法を学ぶ,という新しい構想のコースであり,今後,他術式も,本コースの組み立て方を雛型に構成していく予定である.他術式についてもアウトカムに応じた必要スキルを盛り込んでいくが,モジュールは,VRシミュレータ(術式モジュールに関しては胆嚢摘出モジュールのみにconstruct validityが認められる)の比重が下がることが予想され,臓器モデルを(場合によってはティッシュなどウェット・モデルも)組み込んで設計する. 既に胆嚢摘出術コースは実施,検討の段階に入っているが,他コースについても順次作成,実施し,PDCAサイクルで検討,改良を加えていく予定である.各術式のコース(横軸)の作成に加え,共通のタスクを縦断したテーマ別コースを,訓練者の効率や興味も考慮して作成し,トレーニングコースを最終的に二次元展開する.さらに,現在の(ドライ)訓練法の有用性が低く動物訓練(AL)以外に適当なシミュレーショントレーニング法が無いタスク・モジュールを新モジュールに置換するための臓器モデル作成(と必要に応じて対応するボックスも)を行う.エナジーデバイス操作に関しては,現在のVRシミュレータは超音波凝固切開装置(USAD)の切離感を再現しているとはいいがたい.さらに,血管シーリング装置(VSS)は,VR化されていない.これまで我々が作成してきた疑似胃壁など製作の経験の上に,トレーニングに適した新たな臓器モデルの設計を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は,術式別では胆嚢摘出術コース,テーマ別では,エナジーデバイスに関するコースの作成を行ったので,材料費を多く要する臓器モデル作成費用がかからなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
各術式コースの作成において必要になる臓器モデル作成,テーマ別訓練コースにおけるサーモグラフィーとモニターの追加などに費用を要する見込みである.
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