研究課題/領域番号 |
16K08869
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 徳幸 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (00758732)
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研究分担者 |
伴 信太郎 愛知医科大学, 医学部, 特命教授 (40218673)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共感 |
研究実績の概要 |
医師の共感的態度醸成の必要性が叫ばれるなかで、医師の共感的態度は経年的に低下することが定説となっている。しかしこれは「患者の視点からの量的検証」を経たものではない。よって本研究は、我々が開発した患者の視点から医師の共感を評価する質問紙票であるCARE Measure 日本語版(Aomatsu et.al, 2014)を踏まえて作成された、医師の診療の質を患者の視点から評価する尺度C Q I - 2 の信頼性・妥当性検証を行うことを目的としている。それに先立ち、CARE Measure日本語版の評価者間信頼性に関して明らかにされていなかったことから、本研究で検討を行っている。その結果、評価者間信頼性を検討するために40枚程度の質問紙票を回収する必要があることが明らかになった。これは過去に他国で検討された数値と比較しても妥当な値であり、日本語版CARE Measureの汎用性を高める意義がある。 一方、本研究では医師の共感的態度の経年的低下という定説に対して、質的探索によるアプローチも行っている。すなわち、既に我々は医学生・初期研修医への質的探索により「共感の量的減少ではなく質的変化」の可能性を示した(Aomatsu et.al, 2013)。これを踏まえて、本研究では後期研修医・指導医についても共感に関する認知構造を質的に探索し、共感の認知構造に関する新たな経年的変化モデルを構築することを目的としている。これまでに、患者との信頼関係構築のためのコミュニケーションスキルとして共感を特に重視する総合診療科に焦点を当て、そこで研修をする後期研修医(専攻医)に対して、2017年度は質的探索を行った。その結果、専攻医は臨床経験によって認知的共感を獲得し、それを主に用いながらも、専攻医自身の出産といった非職業的経験によって感情的共感をも行っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、医師の診療の質を患者の視点から評価する尺度C Q I - 2 の信頼性・妥当性検証を行うことを目的としている。しかし、それに先立ってCARE Measure日本語版の評価者間信頼性が明らかにされておらず、それを検討する必要が生じたことは当初予期していないことであった。しかし、過去のデータ(Aomatsu et.al, 2014)を用いた二次データ分析によって、CARE Measure日本語版の評価者間信頼性検討については順調に進展している。また、後期研修医(専攻医)および指導医の共感認識に関する質的探索についても、専門分野に関する検討が新たに必要になったが、総合診療科を選択し、探索を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
CARE Measure日本語版の評価者間信頼性検討に関しては、2018年度に国内外学会での発表および論文によって成果報告をする予定である。また後期研修医(専攻医)の共感認識に関する質的探索についても、国外の学会にて成果報告を行う予定である。今後は総合診療科の指導医に関する質的探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において平成29年度までの購入予定であった消耗品(ビデオカメラ・パーソナルコンピュータ)については、購入することなく研究遂行が可能であった。また平成29年度は、国際学会参加による成果発表が実現しなかったため、渡航費用が使用されなかった。平成30年度は、国内外の学会での本研究の成果報告を行うための渡航費用に用いるとともに、論文作成の際の校正費・投稿料に用いる予定である。
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