研究課題/領域番号 |
16K08873
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
窪田 敏夫 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (50533006)
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研究分担者 |
島添 隆雄 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (10202110)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アドヒアランス / 定量 / 残薬 / 薬局 |
研究実績の概要 |
服薬アドヒアランスを良好に維持することは治療成績の向上に重要である。しかし、日本では海外と医療システムが異なるため、服薬アドヒアランスを定量化し、評価する方法がほとんど検討されていなかった。そのため服薬アドヒアランスに影響する要因を定量的に解析することが困難であった。 我々は福岡市薬剤師会と共同で実施した「節薬バッグ運動」によって得た外来患者1200名の残薬の情報を用い、服薬アドヒアランスの定量化とアドヒアランス不良要因の抽出を行った。処方された薬に対する残薬の割合20%以上をアドヒアランス不良と定義した。処方箋情報におけるアドヒアランス不良の要因を多変量ロジスティック回帰分析により抽出した。さらに、経口糖尿病薬に着目してアドヒアランス不良の要因を探索した。 薬剤費自己負担がない、また併用薬剤数が少ない患者は服薬アドヒアランス不良であった。患者負担金のなさは、薬剤へのコスト意識の低下を招く危険性があること、併用薬剤数が少ない患者は服薬アドヒアランスを良好に維持しやすいと安易に想定すべきではないことが示唆された。一包化実施はアドヒアランス不良の危険性を低減させ、多剤併用時、服薬アドヒアランスを強化する効果的手法であると推察された。 経口糖尿病薬に関しては、服用回数が多い、また食前服用である薬剤は服薬アドヒアランス不良であった。αグルコシダーゼ阻害剤とビグアナイドはスルホニル尿素剤と比較して服薬アドヒアランス不良であった。薬剤の特徴に留意した服薬状況の確認が必要であることが裏付けられた。 本研究結果により抽出したアドヒアランス不良の要因は諸外国における先行研究の結果と類似していた。今回開発した評価法は、日本における患者の服薬アドヒアランス定量化する指標として有用であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施予定であった下記の計画をほぼ予定通り進行することができた。 ①残薬の現状について福岡市と福岡市近郊の医療圏との比較については、予定どおり情報収集済みである。 ②薬局薬剤師による残薬確認のアドヒアランスに対する効果については、福岡市薬剤師会と協力し、平成28年秋に患者登録、データ収集を開始している。 ③残薬を用いたアドヒアランス評価法の開発については、研究実績概要の記載のとおり残薬を用いた評価法とその評価を行った。この研究成果はFrontiers in Pharmacology 2016 Koyanagi K, Kubota Tらに掲載済みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は下記の計画を実施予定である。 ①残薬の現状について福岡市と福岡市近郊の医療圏との比較については、収集したデータを解析し、福岡市とその近郊で比較を行う。 ②薬局薬剤師による残薬確認のアドヒアランスに対する効果については、平成29年度前半までにデータ収集を終える予定である。後半は収集したデータを解析し、薬局薬剤師による残薬確認がアドヒアランスに与える影響を経時的に評価を行う予定である。③残薬を用いたアドヒアランス評価法の開発については、複数の薬を服薬している患者の場合のアドヒアランスの定量法について検討を行う。
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