研究課題
これまで福岡市において薬局における残薬確認と処方調整による医療経済的効果、服薬アドヒアランス不良に対する処方要因、糖尿病薬の服薬アドヒアランス不良に対する処方要因について明らかにしてきた。今年度は残薬確認の効果の調査対象を福岡市と福岡市周辺の4 市郡の965 薬局に拡大した。福岡市と福岡市周辺の4 市郡において、患者背景、患者1人あたりの処方薬剤金額、削減薬剤金額、金額ベースの処方削減率は違いはみられなかった。収集した1792名分の残薬に関するデータを用い、血圧降下薬と比較して、下剤・浣腸剤、漢方製剤、精神神経用剤、高脂血症用剤などの7 つの薬効中分類の薬剤が服薬アドヒアランス不良であることを示すことができた。薬剤師が患者の残薬確認の際、これらの情報を活用することで服薬アドヒアランス向上につながることが期待される。薬局薬剤師による残薬確認を含む服薬指導によっても服薬アドヒアランスが改善しない患者が存在する。従って、薬局薬剤師には更なる服薬指導の方法を開発していくことが求められている。そこで、患者の服薬意識を向上させるため、11段階から成る服用時点別服薬状況スコアを作成した。慢性疾患に対する薬が定期的に処方され、アドヒアランス不良であると判断した外来患者に対する薬局薬剤師の服薬指導時に、患者がスコアによる自己評価を行い、薬剤師がそれを基に服薬指導を行う取り組みを4ヵ月以上継続的に行う研究を実施した。福岡市と大分市の薬局を対象として、予定どおり研究終了し、58名のデータを収集することができた。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に実施予定であった下記の計画をほぼ予定通り実施できた。①残薬の現状について福岡市と福岡市近郊の医療圏との比較についてデータを解析し、結果を得ることができた。②患者によるアドヒアランス自己評価スコアを用いた薬局薬剤師の服薬指導がアドヒアランスに与える影響について、データ収集を終えることができた。
①残薬の現状について福岡市と福岡市近郊の医療圏との比較の成果について論文として発表する。②患者によるアドヒアランス自己評価スコアを用いた薬局薬剤師の服薬指導がアドヒアランスに与える影響については解析を終了し、その成果について論文として発表する。
研究分担者がシンガポールで開催された学会(17th Asian Conference on Clinical Pharmacy)で成果を報告するための旅費を予定していたが、実際の支出が下回ったためである。来年度はイギリスで開催される国際薬剤師薬学連合国際会議での発表を予定しており、翌年度分と合わせて使用する計画である。
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