確実な患者安全が求められる現在、シミュレーション教育は医療人養成に不可欠な学習方略のひとつとなった。シミュレーション教育は確実な臨床スキルの修得における意義も大きい。本研究では、全国医療系大学間の教育実践においてばらつきの大きいシミュレーション教育を担当している管理者や専門教員が抱える間題点の抽出を試み、専門職としての連携を模索した。 シミュレーション教育研修を担当している全国の教職員に呼びかけ、セミナーとワークショップを2回企画した。初回の2018年には43名が参加し、シミュレーション教育の効果的な導入法を学び、シミュレーション教育者に必要なコンピテンシーと研修ニーズを討論した。参加者は、自らのシミュレーション教育実践をお互いに紹介し、自己のコンピテンシーの現状からどのような研修が必要かを考察した。シミュレーション教育が抱える複雑な問題点が数多く存在することが明らかとなった。 2019年には、22名が参加した。海外のシミュレーション教育の現状、看護領域でのシミュレーション教育認証制度について、最新情報を共有した。ワークショップでは、わが国に最良のシミュレーション教育施設と個人認証の制度化について討論した。 独立法人化された多くの医療系大学や臨床研修病院では、厳しい経営が求められているが、シミュレーション施設運営、シミュレータ購入・維持、模擬患者養成に要する経済的負担が認識されず、人員が十分配置されない等の問題点が広く存在することが明らかになった。教員個人の努力では解決できない状況であり、今後のシミュレーション教育実践や客観的臨床能力評価の展開を考える上で取り上げられるべき問題点である。 今後の研究の進展には、シミュレーション教育資格認証制度等の仕組みを構築する等のさらなる検討が必要と考えられる。
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