本研究では、進行がん患者の予後理解の程度や その関連因子を明らかにするとともに、予後理解が将来の延命治療の希望と関連があるかどうかを明らかにすることを目的とする縦断的観察研究を実施した。 今年度は、このデータを用いて、主治医・患者間で終末期ケアについて話し合われた内容が、その後の患者の終末期ケアに関連があるかどうかを検討した。 対象と方法:治癒不能非小細胞肺がん患者で、1次化学療法に増悪後2ヶ月以内の患者とその介護者とした。対象を連続サンプリングし、ベースラインとその3ヵ月後に調査を実施した。ベースライン時点で、主治医に対して、予後、蘇生措置を行わないこと、ホスピス、希望する死亡場所、の4要素について患者と話し合ったかどうかを調査した。また、ベースラインとその3ヵ月後に患者のQOLと抑うつなどについて質問票を用いて評価した。実際の終末期ケア・死亡場所について診療記録より情報を得た。在宅または緩和ケア病棟・ホスピスでの死亡をホスピス死と定義した。 結果:ベースライン時点で200名、3ヶ月後時点で147名の患者から有効データを得た。多変量解析の結果、終末期ケアに関する各要素に関する話し合いの有無は、患者のQOLや抑うつ、ホスピス死の実現に関連がなかった。付加的な結果として、主治医が共感的であることが患者やQOL抑うつが良好であることと関連し、介護者のホスピスケアに関する意向が専門的緩和ケアサービスでの死亡(在宅+緩和ケア病棟)と関連したことが示された。 考察:本研究結果から、主治医と患者が将来の終末期ケアについて話し合うことは実際の終末期ケアには影響を及ぼさず、むしろ主治医が共感的な態度によって患者と良い関係を構築したり、終末期ケアに関する話し合いに介護者が参加を促したりすることが、望ましい終末期ケアの実現に有用である可能が示唆された。
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