研究実績の概要 |
本研究は、医療計画の中で取り上げられる5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)を中心として、各疾病の社会的負担をCOI法を用いて都道府県別に推計し、今後の医療資源配分に関連する意思決定の基礎資料を提示することを目的とした。 COIは、社会における疾病負担を貨幣タームで示す代表的な方法である。直接的な経済負担(医療費)に加え、罹病に伴う生産性の損失といった間接的な負担も測定するのが特徴である。COIは、人院、外来診療等に係る直接費用、治療によって失われた労働の対価である罹病費用、死亡に伴う人的資本の喪失である死亡費用から構成される。算出にあたり、割引率は3%とし、推計対象年は2014年とした。 胃、大腸、肺の各がんについて都道府県別の人口当たりのCOIをみると、平均で胃がん7,400円、大腸がん9,600円、肺がん10,000円と肺がんが最も高かった。脳血管疾患では、全国の人口当たりCOIは平均28,540±5,365円であり、最大は鹿児島県の44,507円、最小は滋賀県の20,419円、変動係数(CV)は0.188であった。人口当たりのCOI各要素と病床数および医師数との相関をみたところ、都道府県別病床数と一人当たりCOI、直接費用、罹病費用との間にそれぞれ正の相関が認められた。また、虚血性心疾患では、人口当たりCOIの平均値は11,439±3,048円であった(最大20,823円(高知県)、最小6,684円(佐賀県)、CV0.266)。人口当たりCOIの各項目と1人当たり医療施設従事医師数との関係をみたところ、人口当たり罹病費用では有意な正の相関がみられた(r=0.340、p=0.019)。
|