研究課題/領域番号 |
16K08891
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
松村 千佳子 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00549305)
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研究分担者 |
矢野 義孝 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (60437241)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬学的支援 / 緩和ケア / 疼痛コントロール / がん患者 / 全身倦怠感 / ステロイド剤 |
研究実績の概要 |
当該年度は外来通院中のがん疼痛患者における包括的な緩和ケアの方法として前年度に構築した「継続的な薬学的支援方法の有用性」について検討を行った。 方法として、前向き観察研究で得られた薬剤師による痛みスコア値と副作用の程度の評価値および患者自身が自己記入したQOL質問表から得られる評価スコア値を用いた。薬剤師は医師の診察前に継続的に疼痛マネジメントを実施することにより、患者個々に応じたオピオイドの投与量調整やオピオイドの変更といった適切な処方提案に繋がった。その結果、医師の処方提案受け入れ率は約90%と非常に高いことがわかった。また継続的な薬学的支援によりオピオイド導入時の痛みスコア値は徐々に減少することが示された。 さらに薬剤師が患者の苦痛を聞き取ることで正確に評価できているかについて検討するために「薬剤師による評価スコア値」と「患者自身による評価スコア値」の一致度を調査した。その結果、薬剤師と患者間の一致度は中程度であった。これらの結果より、外来がん疼痛患者における「診察前面談」は意義のある薬学的支援方法であることが示唆された。これらの結果は第27回日本医療薬学会においてポスター発表にて報告した。 また先行研究では、がん患者の9割近くに出現する倦怠感症状を緩和するためのステロイド投与時期を患者の生命予後に主眼をおいて予後栄養指標のPrognostic nutrition index(PNI)より求めた。しかし、症状軽減効果は患者間のばらつきが大きく、またステロイドの投与量や患者背景など複数の要因が関与していることが示唆された。そのため当該年度は、そこで終末期がん患者の全身倦怠感症状におけるステロイド剤の効果と使用開始期間の関係を検討するために、前向き観察研究を計画した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、継続的に外来オピオイド導入患者における医師の診察前面談を実施することができた。 終末期がん患者の全身倦怠感症状におけるステロイド剤の効果についての検討は、2018年度に実施予定であり、おおむね予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
継続的な薬学支援方法で得られた患者自身で評価した痛みスコア値や副作用の評価値を用いて患者自身のQOL値に影響を及ぼす因子を探索し、外来がん疼痛患者における薬学的支援方法についてさらに考察する予定である。 終末期がん患者のステロイドによる倦怠感症状の軽減率の結果とステロイド使用開始日、ステロイド投与量、生存日数を用いて倦怠感に対するステロイドの投与指標についての検討は、2018年度に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に外国旅費として学会参加を計上していたが、参加できなかったので次年度に使用額が生じた。次年度には緩和医療における薬学的支援方法の内容をまとめて海外の学会に参加することを計画している。
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