進行がん患者に早期からの専門的な緩和ケアを行うことは、患者の痛み、抑うつ、Quality of Life (QOL) において良い影響を及ぼすと考えられている。そこで、外来がん疼痛患者の包括的な緩和ケア方法を構築すること、また終末期がん患者の全身倦怠感症状の軽減におけるステロイドの適正な投与指標を提案することにより、緩和医療における薬学的支援方法を確立させることを目的とした。 まず、外来がん疼痛患者における最適な患者支援方法の検討として、薬剤師がオピオイド導入と同時に行う導入時面談による介入、その後の患者宅への電話による介入、次回来院時からの診察前面談による継続的介入を実施した。その結果、診察前面談による継続的な薬剤師介入によって疼痛強度の軽減がみられたことより、積極的に薬剤師が疼痛マネジメントを実施することで疼痛緩和に貢献することが示された。 次に終末期がん患者の苦痛症状に対する薬物治療の効果と投与指標の検討を行うために、がん患者における全身倦怠感といった苦痛症状を緩和するために経験的に使用されているステロイド投与の適切な投与時期について検討した。その結果、終末期がん患者のステロイドによる倦怠感軽減効果は生存期間に依存し、血清アルブミン値と総リンパ球数から算出される予後栄養指標のPrognostic Nutrition Index(PNI)が投与指標として有用であることがわかった。この結果より、倦怠感症状の緩和目的にステロイドを臨床現場で使用する際の1つの投与指標を示すことができた。 これらの結果は、緩和医療領域において患者QOL向上だけでなく緩和ケアの質向上における新たな知見を発信できたと考えられる。
|