本研究は,国際的に解明されていない「臓器提供意思表示」という高関与型向社会的行動における行動決定要因を明らかにし,行動を説明するモデルを構築することを目的としている。 4年目の2019年度は,昨年度に引き続き、「年代別の意思表示に資する行動決定因子の探索的研究」を行った。具体的には、幼児から高校生までを対象とし、年代別に行動目標を設定し,その目標にあった科学コミュニケーション手法について,先行研究調査,定性調査から仮説を導出し、それを検証するための介入方法,教材・ツールを定め,実装組織Share Your Value Projectとともに、検証を行った。 実証の機会としての「MUSUBU2019」では、自治体、医療機関、市民団体とともに地域実装組織を構築して協同し、園児、小学生、中学生、高校生、大学生に対する介入を行い、その効果測定を行った。幼児「自分の気持ちを伝えられるようになる」、小学生「感謝の気持ちをカタチにし、大切な人と話し合う」、中学生「臓器移植について家族と話す」、高校生「臓器提供の意思決定に関する考えを話す」、大学生「自分の意思について考え、可能な限りその場で意思表示する」を行動目標として介入の効果測定を行った結果、対話が促進因子であることが明らかになった。また、自己効力感も重要な因子であることが示唆された。 研究成果の社会還元の場として、「SYVPソーシャルマーケティング研究会」を主催し、多様なステークホルダー約100名の参加を得た。その報告内容について「ソーシャルマーケティング研究」第4巻第1号も発刊した。また、一連の研究を総括し、「意思表示」を具体的な行動事例とした「高関与型向社会的行動の説明モデル」を精緻化し、論文化した。
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