研究実績の概要 |
天理よろづ相談所病院、内分泌内科に通院する糖尿病患者を対象として、2009年から約4000名の大規模レジストリを作成している。本年度は、2018年度の患者調査を行い、検査データ、薬剤データを医療情報部から取得し、データセットを作成した。2009年からのデータと統合し、本年度は糖尿病関連の合併症との関連、特に糖尿病患者の心理的負担感と生命予後との関連について検討を行った。心理的負担感をProblem Areas in Diabetes(PAID)スコアで評価し、その後の全死因死亡リスクとの関連を調査。潜在的な交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、PAIDスコアと全死因死亡との独立した関連を調べた(平均追跡期間:6.1年)。研究の集団は、男性2,025例、女性1,280例、平均年齢64.9歳、平均BMI 24.6、平均HbA1c 58.7mmol/mol(7.5%)であった。多変量調整モデルにおいて、PAIDスコアの第1五分位に対する第2~第5五分位の全死因死亡の多変量調整HR(95%CI)は、順に1.11(0.77~1.60、p=0.56)、0.87(0.56~1.35、p=0.524)、0.95(0.63~1.46、p=0.802)、1.60(1.09~2.36、p=0.016)であった。サブグループ解析において、男性ではPAIDスコアと全死因死亡との関連がみられた(HR:1.76、95%CI:1.26~2.46)が、女性では認められなかった(HR:1.09、95%CI:0.60~2.00)。糖尿病の心理的負担感と性別との間に、有意な関連(p=0.0336)が認められた。本研究の成果は、国際的な糖尿病専門誌であるDiabetologia誌に掲載された。
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