研究実績の概要 |
EQ-5D-Yは小児用尺度であり、対象年齢は8歳から15歳までとされる。本年度の研究においては、EQ-5D-Yの回答をQOL値(効用値)に換算するためのvalue set を作成するための調査データを解析し、日本人の選好を反映したEQ-5D-Yのvalue setを作成した。調査においては、日本全国5ヶ所(東京、新潟、大阪、岡山、福岡)各200名、全体で1000名の一般の人々を対象者とした。EQ-5D-Yで記述された健康状態に対して、Time trade-off法(TTO法、時間得失法)とDiscrete choice experiment(DCE法、離散選択法)をともに用いて、評価を行った。回答者は、納税者の選好を反映するため、小児ではなく一般成人としたため、10歳の小児の健康状態を想像してもらい、回答者はその小児のproxy(代理人)としての評価を依頼した。なお、本調査は開発元であるEuroQol本部の共通プロトコルを用いて実施した。DCE法で得られた回答はmixed logit modelを用いて解析し、得られたlatent scaleをcTTOのスコアにマッピングすることによりQOL値(効用値)に換算した。得られた結果にはinconsistency(健康状態と係数が逆転する現象)は起こらなかった。最悪の健康状態[33333]のスコアは、0.288であり、成人用のEQ-5D-5LあるいはEQ-5D-3Lの当該状態と比べて大きな値をとっていた。“Having pain or discomfort”と “Feeling worried, sad, or unhappy”の項目の係数が、その他の項目の係数と比べて、大きい傾向があった。本調査の結果を用いて、EQ-5D-Yの回答を日本人の選好を反映したvalue setを用いて換算することが可能になったと考えられる。
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