研究課題
本研究では、がん分子標的薬の代謝動態特性と感受性の個人差要因の解明を目的に、最終年度は、初年度から継続中のパゾパニブ(PAZ)の薬物動態評価を中心に、有効性・安全性との関連および薬理ゲノムについて、最終解析を実施した。腎細胞癌または悪性軟部腫瘍患者(25名)を対象に、定常状態におけるPAZ血中濃度をLC-MS/MS法を用いて測定した。目標トラフ濃度として20.5 μg/mLを指標に、PAZ用量調節について主治医に提案した。また、薬物血中濃度モニタリング(TDM)を実施しない患者群のアウトカムデータとして、自施設における過去の治療患者(12名)をヒストリカル・コントロールとした。その結果、PAZトラフ濃度の上昇に伴い、最良総合効果に改善傾向が認められた。PAZ治療継続期間は、TDM群の方がコントロール群と比べて有意に延長することが明らかとなった。また、グレード3以上の有害事象の発現頻度は、TDM群の方がコントロール群と比較して低い傾向であることが判明した。PAZの薬物動態関連遺伝子多型について検討した結果、海外において既報のCYP3A4*22遺伝子多型は同定されなかった。また、CYP3A5*3およびABCG2 421C>A遺伝子多型のPAZ血中濃度に対する影響も認められなかった。一方、制酸剤の併用によるPAZ血中濃度の有意な低下と生存期間の短縮が明らかとなった。以上の研究成果は、PAZの適正使用を推進する上で有用な知見を提供するものであり、TDMを活用したPAZの用量調節と薬物相互作用の回避による治療アウトカムの改善の可能性が示唆された。
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Front Oncol
巻: 9 ページ: 1375
10.3389/fonc.2019.01375
http://www.asahikawa-med.ac.jp/hospital/pharmacy/