研究課題/領域番号 |
16K08906
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
満間 綾子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (10467326)
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研究分担者 |
安藤 雄一 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (10360083)
下方 智也 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (70612745)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 癌 / がん薬物療法 / 抗凝固薬 / 血管新生阻害作用 |
研究実績の概要 |
がん薬物療法を受けるがん患者(大腸,乳腺,腎臓,造血器,軟部肉腫,肺がんなど原発臓器は問わない)を対象として出血・血栓症をきたした患者の評価を継続した。特に、血管新生阻害作用を有する分子標的薬であるベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブ、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドマイドを投与中の患者では、出血・血栓症の発症リスクが高いが、対象患者では血栓症の発症が中心であった。また、新たに適用となった薬剤では、ラムシルマブ、アフリベルセプトなどが血管新生阻害作用を有して広く使用されるようになっている。一方でニボルマブなど免疫チェックポイント阻害薬の適応拡大もあり、がん薬物療法の選択肢が増えたため、血管新生阻害作用由来の副作用か他の薬剤の影響かの鑑別が困難になっている。 がん患者に発症した血栓症の治療として新規抗凝固薬の内服を開始する患者も引き続き外来患者を中心に散見された。血栓症については、治療効果判定の画像で無症状のうちに判明する場合がある。がん治療の継続を望む患者のニーズが高く、適用拡大が進んでいる免疫チェックポイント阻害薬など他の抗がん薬を選択する場合もみられるようになった。一方で、血栓症治療で改善が認められ、外来通院可能な患者では新規抗凝固薬の内服を継続しながら、効果を得ているがん薬物療法を再開する患者も判明している。したがって、血栓症の急性期が過ぎた後に、がん薬物療法と新規抗凝固薬服を継続して実施する患者では薬物相互作用など留意すべき点が多くなっており、長期観察の蓄積が重要な意義を持つものと考えられた。 本研究に関連して、第38回日本臨床薬理学会学術集会において、最近の分子標的薬を中心とする抗がん薬の進歩と臨床薬理的な視点の重要性に焦点をあてたシンポジウム「臨床薬理学と臨床腫瘍学の接点」で研究代表者らが発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
がん薬物療法を受けるがん患者(大腸,乳腺,腎臓,造血器,軟部肉腫,肺がんなど原発臓器は問わない)での出血・血栓症のイベントが予測よりも少なく、血栓症が中心であった。また、偶発的に画像診断で判明する場合もあり、新規抗凝固薬の内服を開始する患者も散見されている。適用拡大が進んでいる免疫チェックポイント阻害薬など他の抗がん薬を選択する場合もみられるため、特に腎がん、消化器がん領域では必ずしも血管新生阻害薬を後治療で使用されない場合も多くなっている。引き続き症例集積を継続し、新規抗凝固薬の内服後の経過についても観察し予後予測因子の関連を見い出す検討を重ねていく。
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今後の研究の推進方策 |
心・脳血管障害の合併により、抗凝固薬としてワルファリンの他、新規抗凝固薬(トロンビン阻害薬:ダビガトラン、第Xa因子阻害薬:リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)を投与されているがん患者を対象として、抗がん薬との薬物相互作用の影響を解析する。 上記対象患者に加えて、がん患者に発症した血栓症の治療として新規抗凝固薬の内服を開始する患者も散見される。平成30年度も同様の臨床経過に関する観察研究と抗凝固薬との薬物相互作用の検討を行うが、がん患者に発症した血栓症治療の臨床情報や副作用およ び治療耐用性について、出血・血栓症の臨床経過、発症との関連を検証する。さらに薬物相互作用の影響を解析する。適用拡大や新規抗がん薬の開発によって治療選択肢が増える中でより長期での観察の蓄積によって副作用経過などの追跡が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 患者観察研究を含んでおり、治療選択肢の増加もあり、当該年度の該当患者が予測より少なく、また長期観察による研究成果をみるため、助成金に残額が生じた。 (使用計画) 次年度以降、患者観察の蓄積により、長期観察結果や研究成果を得て、学会発表、研究成果報告など実施する予定である。
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