研究課題/領域番号 |
16K08909
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
劉 克約 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40432637)
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研究分担者 |
西堀 正洋 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50135943)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳出血 / 硬膜外出血 / 抗体医薬 / HMGB1 |
研究実績の概要 |
High mobility group box1(HMGB1)は、有核細胞の核内に存在する非ヒストンタンパク質で、転写調節やDNA 修復に関与するタンパク質である。HMGB1 は壊死細胞やある種の刺激を受けた細胞から細胞外へ放出され、炎症メディエーターとして注目される。申請者は、HMGB1 を標的とする抗体医薬を発想し、すでにラットの脳梗塞、脳外傷モデルで、抗HMGB1 単クローン抗体が血液脳関門 保護と脳内炎症抑制を介し、劇的な脳浮腫抑制作用を発揮することを明らかにしてきた。脳卒中は、虚血性と出血性に大別できるが本研究では脳実質及び硬膜下出血動物モデルを用いて、出血性脳卒中に対する抗HMGB1 単クローン抗体の評価を行い、汎用性治療薬としての可能性を検討した。脳実質出血好発部位である線条体へコラゲナーゼを微量投与することにより安定したラットの脳実質出血モデルを作成した。ラット頭蓋骨に小穴を開け、硬膜下に27G 針を挿入し,動脈より採取した0.3mlの自家血を3分間かけて注入し、硬膜下出血モデルを作成した。両者ともX 線CT 装置で血腫を確認し、一定の神経症状を呈する個体を選別し、抗HMGB1 抗体の治療効果の評価を行った。抗HMGB1抗体の投与は硬膜外出血後の脳血管攣縮及び脳内出血後の血腫周囲の炎症反応を著明に抑制した。脳出血障害によって、血腫周囲の神経細胞の核内に局在したHMGB1は核膜部位に集積後、細胞質へ移行した像が観察された。脳障害によって神経細胞の核から放出されるHMGB1は脳血管攣縮及び脳内出血後の二次性炎症反応を引き起こす重要な因子であることを実験によって、証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、安定したラットの脳実質出血及び硬膜外出血モデルを用いることで、脳の出血性損傷における抗HMGB1抗体の役割についての結果を得た。本研究の第一の目標である、脳内出血することによる二次性炎症反応、脳血管攣縮の発症を抗HMGB1抗体で抑制できることを明らかにし、最初の目的を達成することができたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討要因としては、脳出血による血管攣縮、脳血流量の変化と抗体投与効果を解析するため、レーザードップラー血流測定計で経時的に脳血流を測定する。さらに、血液凝固因子トロンビンにより誘発される神経細胞死の過程におけるHMGB1 の役割を解明することを目的としている。
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