研究課題
HMGB1はマクロファージ、単球、好中球、内皮細胞、上皮細胞、樹状細胞、平滑筋細胞等さまざまな細胞で発現し、炎症性メディエーターであることに注目し研究を行なう中で、我々は特異的単クローン抗体を作製し、出血性脳卒中の治療効果及びメカニズムの解明を目的とした。脳実質及び硬膜下出血の動物モデルを用いて出血後の脳組織中並びに血中炎症性因子、血管攣縮関連分子を調べた。脳内出血モデルの場合は出血24時間後に、炎症性サイトカイン(TNF-α,iNOS,IL-1β,IL-6,IL-8R,COX-2,MMP2,MMP9)及び血管収縮受容体(AT1,PAR1,V1,TXA2)、硬膜下出血モデルの場合は出血48時間後に、炎症サイトカイン(IL-6,TNF-α,iNOS)及び血管収縮受容体(PAR1,TXA2,AT1,ETA)のレベルが正常ラットと比較して上昇した。また、脳出血性神経細胞死における酸化ストレス因子におけるHMGB1の役割について組織二重免疫染色で解析した。その結果、脳内出血モデルにて、線条体及び頭頂葉から側頭葉大脳皮質領域で、ニューロンとグリア細胞の核内に局在したHMGB1は核膜部位に集積後、細胞質へ時間依存性に移行することが観察された。さらに抗体の脳内分布をヒト化HMGB1抗体の投与で追跡した際には、大脳皮質領域の血管に沿って血腫周囲領域に神経細胞質内、血腫中心に細胞核内に抗体が発現し、脳血腫の周囲にIL-1β、AQP4、活性化されたミトログリア細胞が高発現された。硬膜下出血モデルに対して、脳底動脈の血管平滑筋とHMGB1共染した結果、硬膜下出血48時間後に平滑筋細胞核内のHMGB1は細胞外へ放出することを確認された。脳出血後の微小循環障害に関して、出血障害6時間後、3日後に血管透過性をエバンスブルー色素の漏出を指標として評価した。このような神経細胞障害の関連因子に対して抗HMGB1抗体の末梢投与で著明な抑制効果として低酸素ストレス下にある神経細胞の代謝の制御に関与する可能性がわかった。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度末に若干の遅延がみられるが,最終年度までに 目標値を十分に達成できる見込みのあるもの
前年度の研究で明らかになった出血性脳損傷におけるHMGB1の経時変化の結果を基に、今後の研究ではHMGB1と血液因子や標的細胞の解析を進めて出血性脳損傷におけるHMGB1の役割を明らかにしていく。また、HMGB1の炎症性サイトカインとしての機能に対する抗HMGB1抗体の阻害効果のin vitro評価方法についても濃度設定や測定条件を変更して安定したデータを得るための実験の設定を進める。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (7件)
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