研究課題
クローン病(CD)の治療薬であるインフリキシマブ(IFX)の短期(10週後)と長期(1年後)の治療効果に患者間で個人差が認められる。この機序解明と治療効果を予測できるバイオマーカーを同定するために,2つのシグナル経路(Dectin-1とAktシグナル系)から3個の候補遺伝子を選出した。IFX治療を受けたCD患者127名を,治療開始10週後あるいは1年後の治療効果の有無で治療感受性群と治療抵抗性群に分け,候補遺伝子内の計10個の一塩基多型を解析した。そして,両群間で一塩基多型の出現頻度の有意差検定を行った。IFX治療開始1年後において,CLEC7Aのrs11053623で,T/CあるいはC/C genotypeを持つ患者は約3倍の治療感受性を示した(P = 0.028)。同遺伝子多型をバイオマーカーに用いた遺伝子診断では,感度63.9%,特異度63.2%,陽性的中率89.9%,陰性的中率25.5%であった。本研究により,CLEC7AはIFXの薬剤応答性遺伝子であることが初めて示唆された。免疫賦活作用のあるbeta-glucanの受容体Dectin-1 (CLEC7A)のrs11053623で,T/CあるいはC/C genotypeを持つ患者では,Dectin-1シグナル経路が抑制されているため,途中からクロストークしてNF-kBへのシグナル伝達が減弱して治療感受性を示すと考えられる。また,同遺伝子多型を遺伝子診断に応用した場合,陽性的中率が高いことから,CLEC7Aのrs11053623で同genotypeを持つ患者は約9割の確率でIFXの治療効果が1年以上続くことが示唆された。今後,Dectin-1 (CLEC7A)の機能解析を進め,IFXの治療感受性や治療抵抗性を示す病態を分子レベルで解明し,CDに対する新規分子標的治療薬の開発に繋げたい。
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Thyroid
巻: 29 ページ: 674-682
10.1089/thy.2018.0212
http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/treat/works-j.html