研究実績の概要 |
本研究では、マウスを用いてアルコール依存モデルを作成し、依存時および離脱時のmicroRNAの発現変化を様々な脳部位において検討した。実験動物には6 週齢のC57BL/6J 雄性マウスを用いた。マウスにエタノールを含む液体試料を10日間摂取させた後、脳を摘出し、それぞれ側坐核、腹側被蓋野、扁桃体、前頭皮質に分画した。アルコール依存時の脳内におけるmicroRNA の発現をこれらの部位において、それぞれ、miR-124, miR-132, miR-212, miR-146a, miR-29a, let-7b についてreal-time RT-PCR にて行った。アルコールを慢性処置したマウスは休薬後、著明な離脱症状を示し、依存形成が確認された。アルコール依存時の脳内におけるmicroRNA の発現は、過去の研究と同様に側坐核においてmiR-124の有意な増加が認められた。一方、腹側被蓋野において、miR-212,miR-146aの発現低下が認められた。次に、アルコール依存形成後、アルコールを含まない飼料に置き換えて離脱させた離脱モデルのmicroRNA発現変化を検討した。アルコール離脱9時間後のmicroRNAの発現を検討した結果、腹側被蓋野におけるmicroRNAの発現低下が維持されていた。さらに、扁桃体において、miR-212, miR-146a, miR-29a の発現が有意に低下した。本研究の結果、アルコール依存時における脳でのmicroRNAの発現は部位によって異なることが明らかとなり、特に腹側被蓋野および扁桃体におけるmicroRNAの持続的な低下がアルコール依存形成に一部関与している可能性が示唆された。
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