前年度までにアルコール依存時における脳内のマイクロRNAの変動およびそのターゲットとしてのToll-like receptor の関与が得られている。本年度はアルコール依存時におけるマイクロRNAのさらなる発現変化を検討するためにマイクロRNAアレイを用いた網羅的な解析を行った。これまでの研究で確立しているアルコール依存動物を用いて脳を摘出し、total RNAを抽出し、Cy3をライゲーションした後に16000個のマイクロRNAプローブをもつアレイスライドにハイブリダイゼーションさせ、マイクロアレイリーダーで検出した。その結果、前年度までに得られたマイクロRNAとは別のマイクロRNA47種について有意な発現増加が認められた。そこで、得られた47種のマイクロRNAについてデータベースからターゲットスキャンを行い、1019種の候補遺伝子を同定した。その候補遺伝子の中でmiR-3063-3pのターゲットであるhistone deacetylase (HDAC) 7に着目した。HDAC7 はクラスIIのHDACであり、脳内にも発現しているが脳における機能は明らかではない。一方、HDAC7はマクロファージにおいてTLR4を介した炎症反応に関わっていることが報告されている。また、我々は以前非選択的クラスIIHDAC阻害薬であるトリコスタチンAがアルコールの再燃形成を抑制することを明らかにしている。これらのことからアルコール依存形成におけるmiR-146aを介したTLR4の活性化においてmiR-3063-3pを介したHDAC7の発現調節が関与している可能性が示唆された。
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