研究課題/領域番号 |
16K08914
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
足立 哲夫 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40137063)
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研究分担者 |
原 宏和 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30305495)
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (60453057)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ / ストレス / シグナル伝達 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
1.近年、プラズマ照射の医療への応用が急速に進み、有為な効果が示されているものの、その効果を証明するメカニズムについては未解明な部分が多い。プラズマ照射法として、予めプラズマを照射して調製した培地plasma-activated medium(PAM)を負荷する間接法の方が「より安心・安全なプラズマ医療」に繋がると判断した。本申請課題では、PAM負荷に対する細胞応答ダイナミクスの解明とPAMの臨床応用に向けた橋渡しとなる情報の提供を目的とし、今年度は以下に示す結果を得た。 2.緩和なプラズマ照射条件にて調製したmild PAM負荷による正常細胞のストレス抵抗性獲得メカニズムについて、昨年度の研究によりKeap1-Nrf2系の活性化を介する抗酸化酵素HO-1の発現亢進による可能性を提示したが、本年度はNrf2をノックダウンした場合にHO-1発現の亢進や酸化ストレスに対する抵抗性がみられなくなることを確認し、その結果よりKeap1-Nrf2系の関与を明らかにした。 3.PAM中に高濃度に含まれるnitrite/nitrate (NOx)は、単独ではPAMのがん細胞傷害作用を誘導することはないが、H2O2による細胞傷害を増幅する。そのメカニズムについて検討した結果、H2O2によるチロシンニトロ化、ミトコンドリア膜電位の低下、ミトコンドリアアポトーシス抑制蛋白Bcl2の発現低下、ATP産生低下、細胞内へのカルシウム流入をそれぞれ増幅することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.PAM中に高濃度に含まれるnitrite/nitrate (NOx)の作用メカニズムの解明についての研究の着手が遅れ、平成28年度の進捗状況にはやや遅れがみられたが、平成29年度には、その点について精力的に研究を進めた結果、PAM中に含まれるH2O2による細胞傷害作用、特にミトコンドリア機能低下の増幅作用によることを明らかにできた。 2.Mild PAM負荷による正常細胞のストレス抵抗性獲得については、平成28年度に引き続き精力的に研究を進め、そのメカニズムを明らかにすることができた。また、mild PAM中に含まれる低濃度のH2O2(50 μM程度)がその効果発現に関わっていることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、細胞培養に用いているDulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)にプラズマを照射して調製したPAMを用いて研究を進めてきたが、ヒトへの投与を想定した場合、細胞培養用培地はヒトに投与することがないため、それから調製したPAMでは不適切になる可能性がある。そこで、DMEMの代わりに臨床現場で用いられている乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液にプラズマを照射して調製したPALやPAAのがん細胞アポトーシス誘導作用について明らかにする。 また、DMEMには、電解質、アミノ酸、ビタミンなど多くの成分が含まれるため、どの成分がPAMの細胞アポトーシス誘導作用に関与しているかを明らかにすることは困難である。一方、乳酸リンゲルは3種類の電解質と乳酸ナトリウムを含有するのみであるため、どの成分が活性発現に関わっているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施したmild PAMの正常細胞のストレス抵抗性獲得のメカニズム解明、PAM中nitrite/nitrate (NOx)の作用メカニズムの解明の実験とも、平成28年度に購入した試薬を使って実施した実験項目もあり、その分次年度使用額が生じた。
平成30年度は、これまでの研究対象であるPAMではなく、PALの作用とそのメカニズムを解明する研究で、新たな切り口からの実験項目も多く、それに必要な試薬等の消耗品購入に充てる。
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