研究実績の概要 |
近年、抗体医薬品が盛んに開発され、世界医薬品売上高ランキングの上位を占めている。本研究では、ヒトモノクローナル抗体医薬品アダリムマブの抗原結合部位を含んだFabをターゲットとし、アミノ酸変異導入によって機能性を高めた改変Fabの作製を目的とする。2019年度では、作製したFab変異体の安定性及び凝集性の評価により物性の評価を行い、ラット及びマウスを用いてFab変異体の体内貯留時間の評価と抗原性の評価を行った。 これまで、新規の分子間SS結合導入による安定化を目的として12個の変異体をデザインし、遺伝子工学的手法によってCys導入変異体を作製していた(No1~No12変異体)。これらの変異体のうち、これまで酵母による発現が確認できていなかった3つ(No7,8,10変異体)について検討を行った結果、酵母からの発現・精製ができ、デザインした全て変異体の調製を物性の評価が達成された。No7,8,10変異体いずれも分子間SS結合形成が見られ、それに伴う安定化もDSCにより評価できた。またNo5について、C末端のH鎖のみCysを持つ変異体を作製しPEG化体について、ラットに投与し体内動態を調べたところPEG化による大幅な半減期の増加が認められた。Fabの糖鎖付加体では、長い糖鎖と短い糖鎖が付加した2種のFabが調製でき、糖鎖が長いほど凝集を抑制することを明らかにした。またラットの体内動態実験では糖鎖付加が半減期を短くすることが分かり、マウスへの投与による抗原性の評価では糖鎖付加が抗原性を抑えることが分かった。
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