研究実績の概要 |
肺癌で高頻度に発現上昇し、正常臓器での発現が低い蛋白LASEP1,LASEP3, URST1につき血清、予後マーカー、治療標的分子候補としての有用性を確認した。血清マーカーとしては、肺がん患者血清中のLASEP1, LASEP3は、健常者の血清と比較して有意に高値を示した。早期肺がんにおいても、高感度な血清マーカーであった。tissue microarrayによる検討では、非小細胞肺がん組織中のLASEP1,LASEP3, URST1の発現群は、非発現群より有意に予後不良であった。治療標的分子として、siRNAで遺伝子の発現を抑制すると、がん細胞の増殖が抑制された。LASEP1,LASEP3は、siRNAにて遺伝子発現を抑制するとSub G1期の細胞の割合が増加し、アポトーシスが誘導された。更に、siRNAを導入した細胞に対しGene chipを用い、がんの増殖に強く関与する下流遺伝子を同定し、PCRで発現を確認し、機能解析を進めた。URST1については、siRNAにて遺伝子の発現を抑制するとG2/M期の細胞の割合が増加し、細胞分裂に重要であることが判明した。URST1の機能を抑制する小分子阻害剤を添加すると、細胞増殖が抑制され、G2/M期の細胞が増加した。更に乳癌、口腔癌、悪性胸膜中皮腫のURST1は、正常組織と比較し、発現上昇しており、有望な候補であると考えられた。
Liquid biopsyとして、肺がん患者血清中のcfDNA(cell free DNA)やエクソソーム中のRNA, DNAを採取して、癌特異的な遺伝子変異を血液中で同定する検討が進んでいる。今年度は、32例の患者血清からcfDNA, エクソソームを回収した。これらは、高感度なDigital PCRで検出して、血清EGFR遺伝子変異を一部検出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌で高頻度に発現上昇し、正常臓器での発現が低い蛋白LASEP1,LASEP3やURST1につき血清、予後マーカー、また、治療標的分子候補としての有用性を確認した。siRNAでこれらの遺伝子の発現を抑制すると、がん細胞の増殖が抑制された。
肺癌で発現上昇し、がんの増殖に関与する遺伝子を複数検出し、細胞周期や下流のシグナルを検討して、機能解析が進んでいる。一部の候補では、特異的に機能を抑制する小分子阻害剤を入手し、siRNAでの検討と同様に細胞増殖が抑制され、細胞分裂にどのように関わるかが判明した。これらの阻害剤については、臨床応用に向けた検討を進めている。更にURST1は、乳癌、口腔癌、悪性胸膜中皮腫においても、その対象を広げて、他臓器の腫瘍においても有望なマーカーを発見しつつある。
Liquid biopsyとして、肺がん患者血清中のcfDNA(cell free DNA)やエクソソーム中のRNA, DNAを採取してDigital PCRでがん特異的な遺伝子変異を検出することを試みているが、昨年度も随時入手した血清(32例)で回収し、遺伝子変異の検出することは進んでおり、順調に進んでいると考えている。
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