研究課題/領域番号 |
16K08932
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研究機関 | 群馬パース大学 |
研究代表者 |
長田 誠 群馬パース大学, 保健科学部, 准教授 (20569628)
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研究分担者 |
井上 修 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00432154)
井上 克枝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10324211)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | S100A13 / CLEC-2 / 血管平滑筋 / 動脈硬化 / 血小板活性化 / ELISA |
研究実績の概要 |
動脈硬化進展のマーカーとしてS100A13が有用か検討するために、健常者(20名)及び、動脈硬化症群(頚動脈エコー検査で頚動脈血管壁1mm以上、64名)、高脂血症群(30名)の血中S100A13濃度を測定した。昨年度得られた結果から、キットはR&D社のS100A13 ELISAキットを使用し、サンプルは血清とした。結果、健常者群:74.7 pg/ml、動脈硬化群:129.4 pg/ml、高脂血症群:122.0 pg/mlであった。統計解析により、健常者群-動脈硬化症群、健常者群-高脂血症群のp値はそれぞれ0.014、0.080であり、S100A13濃度が健常者群に比べ動脈硬化症群で有意に高いという結果を得た。 動脈硬化の他にも血中S100A13濃度が上昇する疾患がないかスクリーニングを行った。S100A13は正常組織では子宮や甲状腺に強い発現が認められることが知られている。そこで、子宮頸がん、子宮体がん、子宮内膜症等の婦人科疾患、あるいは甲状腺がんやバセドウ病、橋本病等の甲状腺疾患で血中S100A13濃度が上昇するのではないかと考え、それらの患者血清についてS100A13濃度を測定したが、健常者との明らかな差は認められなかった。 一方、昨年度、S100A13濃度の上昇傾向を報告した腎機能低下の患者についてサンプル数を増やしたところ、やはりS100A13の上昇傾向が見られた。ただ、現時点では糖尿病や腎炎など様々な腎疾患全体で見ているため、有意差検定は行っていない。今後各種腎疾患別のS100A13濃度を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在使用しているキットは、昨年度の検討により、血漿では測定不能で血清でのみ測定可能であることは判明していたが、さらに冷蔵保存期間が長くなるとS100A13濃度が上昇することが新たに判明した。実際にS100A13濃度が上昇しているのか非特異的反応が強くなっているのかは不明だが採血後数日以内に冷凍保存しなければならないことがわかった。今回調査した婦人科疾患、甲状腺疾患については外科手術前後で比較することも目的としていたが保存条件がサンプルごとに異なったため、正しい数値を得られず、そのためサンプルを収集し直すこととなり時間がかかってしまった。 マウスに関するS100A13測定を行っていいないこと,血管平滑筋細胞のS100A13発現に関して正確なデータを取得することができていないなど,課題の進行が送れている.遅れている課題を早急に実施したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
S100A13と動脈硬化進展の関連については、ヒトではさらに例数を増やす予定である。動脈硬化モデルであるApoE欠損マウスを用いて血中S100A13濃度が上昇するメカニズムについて解析を行う予定であったが、ヒト用のキットがマウスでは不適であることが去年度の研究で明らかになっていた。最近、いくつかのメーカーからマウス用のS100A13測定ELISA kitが発売されたため、それを用いて野生型マウス、ApoE欠損正常食マウス、ApoE欠損高脂肪食マウスの血清でS100A13濃度を測定する予定である。また、ヒト血管内皮細胞や血管平滑筋細胞からS100A13が放出されるメカニズムを培養細胞を用いて実施する予定である。さらに、血管平滑筋細胞に過酸化水素刺激を加え、S100A13のmRNA発現についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全体的に実験が遅れており、予算をすべて使用できなかった. 次年度においては,S100A13動脈硬化の関連性のためのELISA測定キット、マウスS100A13ELISA測定キットを購入しさらに実験を行う予定である。また、ヒト血管内皮細胞や血管平滑筋細胞でのS100A13の放出に関して実験を行うため、それぞれの細胞と細胞培養液を購入する予定である。
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