研究課題/領域番号 |
16K08937
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
武森 信暁 愛媛大学, 学術支援センター, 講師 (40533047)
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研究分担者 |
鈴木 哲朗 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00250184)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 選択反応モニタリング / 質量分析 / 肝炎ウイルス / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究では、血中に含まれる微量な肝炎ウイルスタンパク質を高感度かつ高選択的に検出するための選択反応モニタリング(SRM)アッセイ法および試料前処理法の開発を行う。昨年度までに、ナノ流量LCシステムとトリプル四重極型質量分析計を用いてHBs抗原検出用のSRMアッセイを確立した。そこで本年度は、確立したアッセイを用いて、ヒト血清試料中に含まれるHBs抗原の定量解析を行った。その結果、~100 IU/mL以上のHBs抗原の検出は十分可能であるものの、血清試料に含まれる夾雑物(他の血清タンパク質成分)に由来する干渉が原因となり、現状のSRMアッセイではこれ以上の高感度化には至らなかった。そこでSRMよりも選択性の高い質量分析法であるMRM3rd法を用いて新たにアッセイ系を確立し、さらなる解析を試みた。その結果、MRM3rd法ではSRM法に比べて検出感度を約10倍改善することが可能であった。アッセイのさらなる高感度化のためには、質量分析の高感度化に加えて、分析用試料の前処理段階におけるタンパク質成分の分画処理が有効である。そこで可溶性ポリアクリルアミドゲルを用いる新規の高分解能ゲル電気泳動法(BAC-PAGE法)を新たに開発し、血清試料の迅速な分画処理のワークフローを確立することに成功した。現在は、血中微量HBs抗原の検出を目的としたBAC-PAGEベースの試料前処理法の開発を進めている。また本年度は、安価な疎精製ペプチドをアッセイ構築のための標準品として活用することにより、HBs抗原の変異体および各種遺伝子型を多重モニタリングするためのLC-SRMアッセイ開発にも成功した。開発アッセイを用いて標的変異体の絶対量計測を行うため、内部標準となる安定同位体標識ペプチドのハイスループットな無細胞生合成法の開発を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アッセイの高感度化に向けて、MRM3rd法の導入や新たな試料前処理法の開発に成功している。また絶対量計測のための内部標準を調製するために、無細胞ベースのペプチド生合成法を開発することにも成功した。一方、当初の予定であったイムノSRMアッセイのための抗体カラムの作成が遅れており、最終年度前半での測定開始を目標に現在準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
イムノSRM/MRM3rdアッセイを開発し、HBV陽性血清試料(CLIA法等によりHBV濃度既知のもの)に含まれる血中微量HBs抗原の絶対量解析を行い、その性能を評価する。定量解析に用いる内部標準の合成には、今年度開発した無細胞ペプチド合成法を活用する。またこれまでに確立した質量分析による血中HBs抗原検出のための実験ワークフローおよび取得したデータの論文化も併せて行う。
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