研究課題
①特発性間質性肺炎の簡便な鑑別診断法を開発するという課題に対して、ヒト特発性間質性肺炎の中でIPF/UIPとNSIP患者、および健常人コントロールの末梢血中から得られた単球表面マーカーをM1型とM2型マクロファージ関連分子に注目しFACSで解析を行った。CD14strong単球分画をMAC387(M1型)およびCD163(M2型)の発現profileを各病型間で比較検討したところ、MAC387/CD163比およびMAC387陽性率がIPF/UIPとNSIPで有意差を示した。特にMAC387陽性率は現時点のROC解析ではAUC値が0.9を超える値を示しており有望な鑑別マーカーの可能性を示唆した。②ヒト特発性間質性肺炎の免疫組織学的解析結果を踏まえそのリバーストランスレーショナルリサーチとしてCD206ノックアウトマウスを用い、可逆性および非可逆性線維化モデルとなるパラコート誘発マウスモデルにおいてCD206陽性マクロファージが線維化の助長あるいは線維化の阻害に作用するのかを明らかにするという研究課題を追求した。C57BL/6Jを背景としたCD206ノックアウトマウスではC57BL/6J野生型と比較して線維化病変の程度が強くCD206が病変形成に保護的に作用していると考えられた。またCD206の発現は、経過中出現するマクロファージあるいは樹状細胞の中でCD11c+CD11b-~±AMsに限定されていた。③ヒト特発性間質性肺炎のIPF/UIP、NSIP、BOOPの免疫組織化学的検討では,抗体が認識するepitopeと抗原賦活法によって染色結果が異なることが明らかとなった。これはCD206の細胞外ドメインの立体構造の病態依存性の変化に由来する可能性が高いと判断された。
3: やや遅れている
①ヒト特発性間質性肺炎の症例数が充分ではなく、今後精力的な症例の収集を必要とする。②CD206陽性細胞が線維化病変を抑制していることは明らかとなったが、CD206陽性細胞を担うAMsの肺傷害保護における役割はまだ明らかにされていない。③CD206は細胞外ドメインのconformationをCa濃度依存性に示すことが知られている。ヒト免疫組織化学的解析の結果が動物実験にどのように反映されるかは現時点では明らかではない。
①今後例数を増やして、IPF/UIPとNSIPの鑑別に有用となりえるかさらに検討を加える。IPF/UIPおよびNSIP症例各々30例程度を目標例数と考えている。②パラコート肺傷害の経過中出現する単球系細胞の主なサブセットはCD11c+AMs, CD11c-CD11b+Ly6C+ exudative macrophages, CD11c-CD11b+Ly6C- exudative macrophages, CD103+DCsである。この中でfibrogenesisに関連するサブセットはまだ明らかではない。今後各サブセットをcell sortし線維化関連遺伝子の発現レベルを明らかにする。またCD206-/-マウスにおけるAMsと線維化関連サブセットの遺伝子レベルにどのような違いが認められるか確認し、CD206陽性細胞に加え各細胞集団の役割を特定する。③またCD206の細胞外ドメインの立体構造変化によってCD206陽性細胞の機能にどの様な違いが生じるか検討を加える。
昨年、当初明らかではなかった実験課題が新たに見つかったため、必要実験の経費のため平成29年度予算を30万円前倒し申請を行い、合計1,900,000円の予算となり、結果的に172,642円の次年度使用となった。
予定通り、実験を遂行する予定である。
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