研究課題/領域番号 |
16K08940
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
山下 雅大 岩手医科大学, 医学部, 助教 (10606685)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 間質性肺炎 / 単球 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
①特発性間質性肺炎のさらに簡便な鑑別診断法を開発するという課題に対して、ヒト特発性間質性肺炎の中でIPF/UIP(n=22)とNSIP患者(25)と健常人コントロール(36)の末梢血中から得られた単球表面マーカーをM1型とM2型マクロファージ関連分子に注目しFACSで解析を行った。CD14strong単球分画におけるS100A9(M1型)およびCD163(M2型)の発現を健常人および各病型間で比較検討した。S100A9/CD163比および陽性率がIPF/UIPとNSIPで有意差を示した。 ②ヒト特発性間質性肺炎の免疫組織学的解析結果を踏まえそのリバーストランスレーショナルリサーチとしてCD206ノックアウトマウスを用い、可逆性および非可逆性線維化モデルとなるパラコート誘発マウスモデルにおいてCD206陽性マクロファージが線維化の助長あるいは線維化の阻害に作用するのかを明らかにするという研究課題を追求した。C57BL/6Jを背景としたCD206ノックアウトマウスではC57BL/6J野生型と比較して線維化病変の程度が強くCD206が病変形成に保護的に作用していると考えられた。またCD206の発現は、経過中出現するマクロファージあるいは樹状細胞の中でCD11c+CD11b-~±AMsに限定されていた。 ③肺腺癌細胞株の小胞体ストレスに対する応答は細胞株によって異なり、特に分子シャペロンProtein-L-isoaspartate (D-aspartate) O-methyltransferase (PIMT)の代償発現の不足は、肺腺癌細胞株A549細胞およびH441細胞の上皮間葉移行を誘導することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①の課題について現在論文執筆中である。 ②についてはさらに研究を発展させる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
②の研究について:CD206の受容体はカルシウム依存性にconformation変化を起こすことが知られている。数種の異なるエピトープのCD206に対する一次抗体を用いてIPFとCOPの肺組織におけるマクロファージに発現するCD206の染色性を検討したところ、IPFとCOPとでは異なる染色性を示し結果的にそのconformation変化に原因を求めることができた。CD206ノックアウトマウスを用いた肺線維症の実験では、CD206の組織障害における保護作用は解明されたが、上述のconformation変化が肺障害に与える影響は明らかにできなかった。今後、患者気管支肺胞洗浄液を用いた共培養実験およびマイクロアレイを行い、comfromation変化が与える影響の詳細を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は新規バイオマーカーの確立とともに病態生理の解明を目指したものである。現在、conformationを起こしているマンノース受容体を発現するマクロファージの肺胞上皮細胞に対する傷害性の検討中である。今後上述の実験を含めた研究の精緻な追加解明および論文投稿に延長を必要とする。
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