研究課題
1) In vitro:A) 培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)において、キスペプチン10はHUVECへの単球(THP1細胞)接着を有意に促進することは明らかとしているが、KP-10の受容体アンタゴニストであるPeptide234(P234)の前処理でその作用はキャンセルされた。また、THP1細胞とヒト正常単球で比較したが、接着の度合いに差は認めなかった。アドロピンは、接着因子であるICAM-1、VCAM-1のTNF-α誘導性のmRNAおよびタンパク質発現を抑制し、単球接着を有意に抑制した。E-selectinの発現に影響は認めなかった。 B)アドロピンは、THP1細胞由来マクロファージの泡沫化には影響しなかった。C)ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)において、キスペプチン10はAngiotensin II誘導性の遊走を抑制するが、キスペプチン10単独での作用は認めなかった。また、ケメリンおよびバスピンはHASMCの遊走および増殖を抑制した。2) In vivo:アポE欠損マウスに浸透圧ポンプを用いて、生理食塩水(コントロール)、キスペプチン10、キスペプチン10+P234、P234を4週間投与した。キスペプチン10投与群で、大動脈硬化病変形成は有意に促進した。また、大動脈弁輪部の大動脈弁輪部の病変面積・血管壁の単球/マクロファージの浸潤を有意に促進した。一方、血管平滑筋細胞の含有量は有意に抑制した。キスペプチン10+P234併用投与群およびP234単独投与群で外因性もしくは内因性のキスペプチンを阻害するとそれら全ての作用はキャンセルされた。また、プラーク内の「マクロファージ/血管平滑筋細胞」の比でプラークの不安定化を評価したところ、キスペプチン10投与群で促進したが、P234投与群でその作用はキャンセルされた。
2: おおむね順調に進展している
1) In vitroにおける作用および分子機構:HUVECの炎症・接着、酸化LDLによる培養ヒト単球由来マクロファージの泡沫化および関連遺伝子発現、培養大動脈平滑筋細胞の遊走・増殖に対する動脈硬化における主要な現象についての検討は既に行っており、抑制作用が確認されている。サリューシンβ分画の作用については検討中である。2) In vivoでの作用および分子機構:アドロピン、ケメリン、バスピン、アドロピンでは動脈硬化モデル動物であるアポE欠損マウスへの持続投与によるin vivo実験を行うことが可能な状況である。3) 臨床研究:ネオプテリンおよびキスペプチン10のヒトにおける病態生理学的意義およびバイオマーカーとしての有用性を検討するため、虚血性心疾患(CAD)患者、非CAD患者、健常者の血中濃度をELISAで測定し重症度と血中濃度との相関を比較検討する。また、冠動脈病変切徐サンプルにおける発現を検討中であり、計画通りである。よって、おおむね順調に進展している。
1) In vitro:アドロピン、ケメリン、バスピン、アドロピンのマクロファージの炎症性フェノタイプ(M1、M2)への作用、培養大動脈平滑筋細胞の細胞外マトリックス発現および活性への作用、増殖・遊走を抑制したシグナルへの作用、ヒト単球やHUVECからの炎症性サイトカイン分泌への作用をELISAで検討する。サリューシン分画の各血管細胞への作用について引き続き検討する。2) In vitro:アドロピン、ケメリン、バスピンをアポE欠損マウスへ持続投与し、in vivoでの動脈硬化病変形成への作用を検討する。3) 臨床研究:ネオプテリンおよびキスペプチン10のヒトにおける病態生理学的意義およびバイオマーカーとしての有用性を引き続き検討する。
追加実験が首尾よく進み、予想よりも支出が抑えられたため
次年度の消耗品購入に充てる
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