研究課題/領域番号 |
16K08943
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
佐藤 健吾 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (70549930)
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研究分担者 |
木庭 新治 昭和大学, 医学部, 准教授 (20276546)
渡部 琢也 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (30297014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / バイオマーカー / 血管内皮細胞 / マクロファージ / 血管平滑筋細胞 / 血管作動性物質 |
研究実績の概要 |
1) In vitroの検討:アドロピン、バスピン、ケメリンは、THP-1細胞由来マクロファージの分化自体に影響はないが、炎症性フェノタイプを炎症抑制性のM2にシフトした。また、大動脈平滑筋細胞における細胞外マトリックス発現を検討した。アドロピンはFibronectinおよびElastinの発現を促進させ、バスピンはコラーゲン発現を促進させた。
2) In vivoの検討:アドロピン、バスピンは、動脈硬化自然発症モデル動物であるアポE欠損マウスへの浸透圧ポンプを用いた投与実験にて大動脈硬化病変形成の進展を抑制した。また、予備実験により、ケメリンまたは活性中心を含むケメリン9を投与では、ケメリン9の方がより強力に動脈硬化病変形成を抑制した。また、大動脈弁輪部の病変の大きさは、アドロピン投与で減少傾向であり、バスピン投与では有意に抑制した。共通して、血管壁の単球/マクロファージの浸潤および血管平滑筋細胞の含有量を有意に抑制した。バスピン投与では、血管壁の炎症およびプラークの不安定化も有意に抑制していた。
3) 臨床研究:ネオプテリン、キスペプチン10のヒトにおける病態生理学的意義およびバイオマーカーとしての有用性を検討するため、虚血性心疾患 (CAD) 患者および非CAD患者の冠動脈における発現レベルを検討した。また、CAD患者、非CAD患者、健常者の血中濃度をELISAで測定し、重症度と血中濃度との相関を比較検討した。冠動脈病変における発現は、CAD患者では非CAD患者に比べ、ネオプテリンおよびキスペプチン10の発現は共に増加していた。また、動脈硬化病変の進展の重症度に伴って発現が高かった。CAD患者においては、非CAD患者または健常者に比べ、ネオプテリンの血中濃度は有意に増加し、キスペプチン10の血中濃度は予想に反して減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro実験は、動脈硬化の3大主要現象に対する作用以外にも、それらに関連するマクロファージのフェノタイプ、細胞外マトリックス発現等についての検討まで既に終了しており、計画より進行している。In vivo実験および臨床研究は、申請書に記載した進行計画に則って、効率良く研究が遂行された。よって、実施計画はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1) In vitro:アドロピン、バスピン、ケメリンのヒト単球やHUVECからの炎症性サイトカイン分泌への作用をELISAで検討する。ケメリン9およびサリューシンβ分画の各血管細胞への作用について引き続き検討する。 2) In vivo:ケメリンおよびケメリン9をアポE欠損マウスへ持続投実験を継続して行う。また、ELISAを用いてアドロピン、バスピン、ケメリンの血中濃度を測定する。 3) 臨床研究:ネオプテリンおよびキスペプチン10は、ヒト血中濃度と動脈硬化病変の進展度との相関を引き続き検討する。また、各々のReceiver Operating Characteristics (ROC) Curveを描き、Area Under the Curve (AUC)を求め、比較検討する。更に、診断効率が最も向上するバイオマーカーの最適な組み合わせを見出す。今後、症例を増やし、さらに、虚血性心疾患発症後の追跡調査を行い、心血管イベントや予後との関連も検討する。また、アドロピン、ケメリン、ケメリン受容体、バスピンに関してはCAD患者における発現を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算計上していたよりも安価になった為。次年度に消耗品を購入する。
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