研究課題/領域番号 |
16K08945
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
桧貝 孝慈 東邦大学, 薬学部, 准教授 (70297711)
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研究分担者 |
永井 英成 東邦大学, 医学部, 准教授 (30349899)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | NK細胞 / ソラフェニブ / 糖鎖依存性細胞障害 |
研究実績の概要 |
平成29年度の実施計画に基づき、検討を行った。 平成28年度から継続しているNKG2Dのタンパク性リガンド(MICA、ULBP1-6)のソラフェニブによる発現調節機構を肝がん細胞HepG2細胞を用いて解析した結果、ソラフェニブ処理によりULBP1,3,5のプロモーター活性は減少し、ULBP6は増加傾向が認められた。これらのうち、ULBP1に焦点を絞り、その発現制御機構を詳細に解析して調節領域を決定した。 ソラフェニブによる糖転移酵素の調節機構の解析は、プロモータ領域のクローニングが終了し、現在MEKの活性化による転写活性の変動をルシフェラーゼアッセイで解析中である。また、糖鎖依存性細胞傷害によってのみ傷害される標的細胞を現在限界希釈法にて単一クローンをスクリーニング・取得中である。 また、ソラフェニブの免疫系への作用として共同分担者の永井らにより、肝臓における常在性マクロファージのクッパー細胞の活性化が見出されていることから、RAW264.7細胞の活性化への影響をNO産生により解析した結果、ソラフェニブ処理により、活性化が認められ、その機序はraf/MEK/MAPK非依存的であることが示された。 永井は、肝がん患者37例中でソラフェニブ投与量と血中濃度に相関関係は認められなかった患者の尿検体から、ソラフェニブが検出されたことから、腎排泄の亢進が血中濃度の低下に寄与する可能性を見出した。その他、手足症候群の発現に、ソラフェニブの血中濃度依存的ではないことやソラフェニブ投与により肝星細胞の抑制効果が認められたこと、ソラフェニブと肝動注化学療法の併用順序により予後に変動があることなど、継続的に臨床的解析が進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画である、1)タンパク質性リガンドの転写調節、2)ソラフェニブの新規作用、3)進行性肝癌の病態解析および臨床的検討、4)血中ソラフェニブの測定から得られた変動要因、5)ソラフェニブと肝動注化学療法の併用順序により予後などについて、概ね順調に結果が得られているため
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度から引き続いて、ソラフェニブによるタンパク質性リガンドの転写調節、新規作用の解析を行う予定である。また、現在、糖鎖依存性細胞傷害の標的細胞を単離中であるので、その細胞を用いて、糖鎖依存性細胞障害を効率的に誘導できるNK細胞活性化作用を持つサイトカインの評価などを行う予定である。 また、平成30年度までに見出されたソラフェニブによる新しい作用メカニズム(マクロファージの活性化や糖転移奏功遺伝子の転写調節など)を明らかにする。 永井は、臨床的に見出されたソラフェニブによる新しい効果を、生化学、分子生物学、細胞生物学的手法により基礎の面から、その分子メカニズムを突き止めるとともに、血中濃度解析から得られた結果を利用して、より殺癌細胞効果の高い治療順序やエチオロジーなどの患者背景、副作用発現などを解析する。 これらの知見をもとに、ソラフェニブの新規作用や治療効果、新規免疫療法適用の可能性を明らかにする。
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