研究課題
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の早期発見が強く望まれている。しかし、NAFLDを早期に検出できる簡易的なマーカーは無いのが現状で、検診で容易にできる新規検査法の開発が強く望まれている。申請者らは、これまで血清中のマイクロRNA(miRNA)の探索研究により、NAFLDにより血清miR-122が上昇し、血清miR-27aが減少することを同定している。本研究ではこの2つ血清miRNAの比をとること(miR122/miR27a比)により、NAFLDの新規スクリーニング検査法を確立し、実際の健康診断受診者を対象にしてその有用性を評価することを目的にしている。我々は既に血清miRNAの抽出から定量までの技術は確立しており、血清miRNAの測定自体の問題はない。そこで、本測定を臨床検査への応用として確立されるために、平成28年度は検体の安定性、検体の種類(血清、血漿)の影響などの詳細を明らかにすることを行った。その結果、以下のことが明らかとなった。1.検体の保存温度の影響については、4℃、室温ともに24時間まで測定値は安定であった。2.検体の凍結保存の影響については、-20℃、-80℃にて0~2週間の凍結保存で安定であった。3.検体の凍結融解の影響については、0~5回の凍結融解において安定であった。4.検体のRNAaseに対する影響については、RNAase A(0-100 U/mL)、15分処理に対して安定であった。5.検体が血清、血漿ともに測定値に差はなかった。以上のように、本測定を臨床検査へ応用するための検体の安定性については確保されており、検体は血清、血漿ともに使用可能であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
我々の測定法が臨床検査に応用できるか否かについて、本年度は検体の安定性、検体の種類(血清、血漿)の影響について検討することを計画しており、この点については概ね明らかとなった。ただ、検体の溶血の影響についても追加検討したいと考え現在検討中であることから、本研究の本年度の進捗状況はおおむね順調に進展しているものと考えている。
今後は、本測定法による血清miR122/miR27a比の測定が、NAFLDの新規バイオマーカーとして有用であるか否かについて検討を深めるために、一般住民を対象とした地域住民健康診断受診者の健診データ及び血清を活用して、その評価・検討を進めていく計画である。
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Annals of Clinical Biochemistry
巻: 54(1) ページ: 134-142
10.1177/0004563216647086